201 2016-12-29 23:04:24 |
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(/絡みのないロルでごめんなさい。二人が上手くいきますように!)
(そんな言い方、する? 背後から追い掛けてくる声に、心底耳を塞ぎたいのを堪えて、さっき降りたばかりの車に乗り込んで勢い良くドアを閉める。一瞬だけ見たけど、彼は箱を抱えてもう歩き出していて誰も追いかけようとはしていなかった、これはちょっと奇跡だと思う。でも誰だって面倒ごとは嫌いだろう、俺も厄介払いされるかもしれない。潰れたケースから煙草を一本取り出して火を点けるけど、全然味なんてわからない。メンソールの爽快感も今は喉が痛いだけ。もっと大人だと思ってた、これはただの言い訳や正当化に過ぎないかもしれないけれど……俺の対応が本心じゃないことくらい、解るはずだろ? ふと気配を感じてそちらを見遣ればペアの女の子が窓を覗き込んでいて、後ろにはスタッフもいる。当たり前だ。彼らに、時々つっかえながら、写真をばら撒いた人物は知人であること、迷惑はかけないから一人で解決させてほしいこと、エトセトラを話し、やばそうだったらすぐに連絡して頼ることを約束させられ、ことの外スムーズに撮影の準備へと取り掛かり始める。写真の内容については誰にも聞かれず、一枚ずつ見たわけじゃない俺はあれでゲイだと言われるとは思ってもいない。だから、ペアの子に「さっきのカレシ?」なんて訊かれて驚いてしまった。無論、事実はそうではないので否定すると不満げな表情をされ、訳がわからない。今日は時々ラインナップされるレディースとお揃いの仕様の新作の撮影で、林檎のマークのラップトップの画面にずらりと並ぶまるでカップルみたいな自分たちの写真を他人事のように眺める。どうしたってモデルをやる以上素で写るわけにはいかないから、後で写真を見せられても自分と同じ顔をした誰かが格好つけてる、なんて思ってしまって写真選びに自分から口を挟むことは全くないくらい。一通りの撮影が終わって、昼と夕方の間くらい、一日で一番ダラっとしてしまう時間帯。着替える前に習慣的に携帯を開けば素っ気ないメールの文面、どんだけ時間を潰すのが得意なのか知らないけど、他にメールが見当たらない以上まだファミレスにいるんだろう。慌てて鞄から出しかけた着てきた私服を押し込み直して、これ買い取りで! と少し季節外れの、おしゃれし過ぎてるって格好でメイクも落とさないまま現場から飛び出す。魔女の宅急便のキキが都会に来たばかりの頃みたいに、赤信号も構わず車の間を縫って通りを渡る。息を切らす程の距離ではなくて、ただウェイトレスが甲高い声で何か訊いてくるのを手で制してきょろきょろと茶金の頭を探し)
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