201 2016-12-29 23:04:24 |
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大丈夫ですよ。仕事前に関係者がいる中で部外者と口論発展させようとするのって現実的でない気がしますし。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします!
(しゃがむことによって、下の方を見ていた自分の視界に入り込んだ男の細い手をぼんやり視線で追っていた。乱暴な手つきで収められた写真たち、その箱を抱えてこちらに近付いてくる彼の顔を今やっとまともに見る。何かありましたと宣伝して回るような酷い顔でこちらを睨む想い人を見て、口を開く寸前に食らったみぞおちへの衝撃で軽くむせ込んだ。(腹筋を鍛えていなければ多分この程度では済まなかったと思う。)反射で受け取った箱を大事そうに抱えて、彼の言葉を飲み込んで数秒。「……それがきみの価値ってこと?ここでは本当の女王様でいられる自分が、俺如きに傷付けられるのが気に入らない?」踵を返した彼の背中へ届くようにと声を張った。正直、大したネタだと思う。関係者にゲイだとばれるような写真を撒いてしまった訳だから、傍目には復讐か何かをしに来たのかとでも思われているかもしれない。でも彼にそう思われるのだけは避けたいから、恨みがましく待つ構えだ。それでもここにいられるのは迷惑だろうと自分の中の常識が囁くから、ここから大きな道路を挟んだ向こう側の、24時間営業のファミレスにでも入ろうと思い至ったところで財布を持ってきていないことに気が付く。縁が切れてしまうかもしれないぎりぎりのところを歩いている自覚はあるけれど、汗が引いて冷え始めた頭は妙に冷静で、後ろ髪をひかれながらそのまますごすご家へと引き返した。言い合いに発展するだろうなと、また泣かせてしまうかもしれないなと思いながらの足取りは重くて、やがて辿り着いた我が家の鍵もかけていなかったドアを開ければつい深い溜め息が漏れ出る。とりあえずお世辞にも綺麗とは言えない居間へ行って、ぼろっちいテーブルに箱を置いた。はみ出した写真を丁寧な手つきで中に入れてあげて、眼鏡を外したら財布と携帯と鍵を手に車で家を後にした。24時間営業って、実はアメリカじゃそんなにない。日本の「普通」に感謝しながら、「向かいのファミレスいにるから、電話はいい」と信号待ちの間に簡潔なメールを送信した。……そういえば、仕事が終わる時間を聞いてない!)
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