Sin 2016-12-25 17:13:20 |
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「……はっ!」
眩しい。天龍は自身の意識が続いている事に驚き、慌てて飛び起きた。どれだけ倒れていたのか日はすっかり昇っていた。
「……マジかよ、生きてら。……はは、は。ツイてるぜ!……いてっ、いて……ん?」
沸き上がる喜びに後押しされる天龍だったが、傷が痛みふらついた。傷の具合を確かめようと自身の体を見回すと、不思議なことに気が付いた。
「何だこりゃ……。」
生身の体には丁寧に包帯が巻かれていたのだ。顔に触れれば、そこにもガーゼが貼られており、露出した傷は無いようであった。
「ありがてえんだがよ……。」
天龍は誰にともなく礼を述べつつも、不満そうにむくれた。何しろ……。
「ここまでやるなら連れて帰れよ!要領悪ぃな!助けてもらって言うのも何だがよォ!ったく……そう言えば、奴らはどうなったん……。」
ふと振り向いて見れば、天龍は言葉を失ってそれを見ないようにした。
「うっ……。くそ、夢に出るだろーが……。片付けとけよ……。」
”深海棲艦だったもの”から逃げ出すように、天龍はふらつきながらも立ち上がって帰路についた。艤装は流石に修理されておらず、10ktにも満たない鈍足を余儀なくされた。
「それにしても、何処のどいつだったんだ?面も拝めなかった。」
出張中の提督が帰ってきてから、他の鎮守府に確認をとってもらう予定を考えた天龍だが、程なくして不安が過る。
「龍田は、怒るよなあ……暫く出撃させてくれねえかも……はは……。」
提督さえ態度を窺う龍田にかかれば、自身の自室謹慎もあり得るかもしれない……と、鎮守府への足取りを重く感じる天龍であった。
【序章:完】
【続:一章】
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