餡蜜 2016-12-11 21:12:39 |
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【獣◆3】
※前回の後日談?
※アオじゃなく新たに登場する男side
最近、妙な奴を拾った。人気がなく舗装されていない山道の傍らで、衰弱しきった姿でぶっ倒れていた少年。無愛想で取っ付きにくい冷淡男と周りから散々言われる俺だが、弱った人間を放置できるほど冷めきってはいないつもりだ。
保護し、怪我の手当てをしてやった。別に礼を望んでやったことではないが、目を覚ますなり牙をむいて手当てした恩人に飛び掛かってくるなど誰が予想するだろうか。
俺の喉仏に食らい付こうとした瞬間、少年は一瞬躊躇いをみせた。こう見えても俺は獰猛な獣を狩る狩人として各地を旅してまわる男だ。さっきは油断したが折角うまれた隙を見逃す筈がない。
そして自己防衛兼、反撃に気絶してしまった少年を俺はまた放っておける筈もなく。再び目を覚ました少年は何故だか俺の後を着いてくる。深い事情がありそうだが、敵意むき出しの顔で生まれたての雛鳥のように可愛いらしく旅を同行されても困るってもんだろ。
その事を伝えようとしても、言葉を知らないのか伝わらない。実に変な奴を拾ってしまったものだ。
あれから半年。
「蒼(あお)、早く食え。おいていくぞ。」
「この肉、まずい。しょく、進まない。」
「贅沢いうな。普通の肉だろうが。」
「ぜんぜん、ちがう。」
むくれる少年。俺たちは共に旅をしている。それにしても、よくここまで人間らしくなったものだ。地道に、根気強く言葉から何から何まで教えた俺自身に拍手を贈りたい。
因みに、呼び名がないと不便な為“蒼”と名付けた。少年の深い海色の目にちなんで付けたが、単純だっただろうか。生憎名前のセンスはないんだ。
「…いつか、その肉くってやる。」
「はいよ。おいていくからな。」
「待っ…!」
蒼がたまに見せる狂気。鋭い眼差しは隙あらば俺を食らおうと狙っている。半年も経つのに蒼の心の中に眠る獣は根強く残り中々消えない。
いつか完全に消し去ってやりたいものだ。
隣に並ぶ蒼に視線を向けると目が合った。きょとんとした年相応の顔をする蒼に対し、まるで父親のような心境を抱いている自分に笑いが込み上げてくる。
なんだかんだで俺は蒼との旅を楽しんでいるようだ。
――――――End
アオから蒼になりました。表記が変わっただけです(笑)これからは男と旅をして、年を重ねるごとに蒼は人間らしくなっていくと思います。なんだかんだで面倒見のいい男は頑張ってくれるでしょう←
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