餡蜜 2016-12-11 21:12:39 |
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【怖いものは把握済み】
容赦なく寮の窓を打ち付ける激しい雨音をBGMに、横になり眠りにつこうとしていた俺を、ベッドへ入るなり背後から抱き締めてくる男がいた。
恋人である、後輩の達也だ。
じめじめとした蒸し暑さに寝苦しさを感じていた中、纏わりつかれては寝るに寝られない。
項にかかる吐息もこそばゆい。
さらに身体を密着させてくる達也に、いよいよ俺は口を開いた。
「…暑いんですけど。自分の部屋に戻んないの?」
「今日は先輩と一緒に寝ます。今の時期、人肌恋しいんすよ。」
「嘘つけ。単に怖いだけでしょ。」
「怖くなんかないです。」
「あれれ? 悲鳴あげてたの誰かなー?」
「……」
「怖がりなのにホラー映画なんて見るからだよ。お馬鹿ちゃん。」
「…気になるじゃないっすか。ああいうの。」
ホラーが苦手な癖に好奇心だけは人一倍ある達也は、気になるホラー映画を見つけるとすぐに食い付く。
そして鑑賞し、心底怖がり、俺に被害が及ぶ。
なんという悪循環。
「…ちょっ、」
服の下から達也の手が滑り込んできた。
さりげなく何してくれてんだコイツは。
腹部を撫でられ、肌の粟立つ感覚に俺は慌てて達也の手を掴み引き離した。
「なにして…。」
突如、空に閃光が走った。
何処かで雷が落ちる音。
反射的に身体が強張り、達也の手を強く握ってしまう。
無意識に背後の達也へと身を寄せていた。
そういえば、雷がなんたらって教室で誰かが話していた。
今夜の天気のことだったのか。
「暑いんじゃなかったんすか?」
「…暑い。」
「離れなくていいんすか?」
「…達也が怖いっていうから。今日はこのままでいてあげようかなーって。」
もちろん嘘。
俺が雷が苦手なことを知っている達也がフッと笑った気がした。
「強がり。」
「うっせー。」
「先輩、可愛いっす。」
「…ほら、お子様は早く寝なさい。」
目を閉じる。
…雷鳴は少しだけ怖くなくなったけど、眠れる気がしません。
――――――End
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