餡蜜 2016-12-11 21:12:39 |
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【綾瀬と新條】
――屋上へ来てください。
2-B、新條 正人
朝、下駄箱を覗けばこんな内容の手紙が入っていた。
差出人の名前にため息がでる。
クラスは違うが同学年の新條は甘ったるいミルクティー色の髪にこれまた甘ったるいマスクをしたイケメンで、時と場所関係なしに何度も俺に告白してくる、言わば迷惑の種だ。
手紙をくれたのはこの際構わないが、一つだけ言わせてもらいたい。
「いつ行けばいいんだよっ!」
無視すればいいのにそれができない性格の俺は、一限の授業が終わってから新條の教室へ向かった。
俺の突然の来訪に驚く新條だが、直ぐ様嬉しそうに駆け寄ってきた。
周りの生徒がニヤニヤと笑いながら「今日も頑張れよ。」と新條に声を掛ける。
悲しきかな、新條が諦めず俺に何度も告白していることは学校内に知れ渡り、恋を実らせようと応援する者も続出している。
「まさか、ゆー君から来てくれるなんて思わなかったよ。嬉しいなぁ。どうしたの? あ、ラブレター気付いた?」
「どうしたの、じゃねぇから。5W1Hの“いつ”を書いてねぇだろお前。」
「え、嘘!? 書き忘れてた? 昼休みって書いたつもりだったんだけど…。」
「場所しか書かれてねぇよ。」
あちゃー、と額を押さえた新條は俺を見て口許をニヤつかせた。
「それでわざわざ来てくれたんだ。ゆー君のそういうところ大好きだよ。」
「…っ、…ほら、用事。なんか用があったから屋上に来いって書いたんだろ? ここでもいいなら今聞くけど。」
「あー…そうだね、本当は屋上から叫びたかったんだけど…。ん、今でもいいや。」
……叫ぶ?
嫌な予感がした。
そんな俺の不安をよそに新條は息を大きく吸い込み、次の瞬間馬鹿でかい声を発する。
「2-B、新條正人は、2-A、綾瀬夕陽のことを愛して……ぶふぁんッ!」
言葉が途切れたのは俺が殴ったから。
そりゃあもう思いっきり殴りましたとも。
爆笑する周り。
羞恥で顔が赤くなっているだろう俺は倒れた新條の上に馬乗りになり胸ぐらを掴んだ。
「何叫んでんだよっ! つか今のを屋上でやろうとしてたってことかっ!?お前馬鹿なのアホなの!?」
「ゆー君のことに関しては馬鹿にもアホにもなれます。」
「ドヤ顔で言わんでいいから!」
休憩終了を告げるチャイムが鳴り響くが騒がしさはおさまらない。
そんなこんなで新條からの告白はまだまだ続くのだった。
―――――――End
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