ジュダイクス 2016-12-02 19:13:31 |
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プロローグ
都内の高校に通う高校一年生、日向光昭は池の畔で糸を垂らしていた。彼の通う高校では夏季に林間学校が存在しており、生徒の自主性を尊重する校風のその高校では主食以外の食料は現地調達とされていた。その為、夕食のおかずを確保するために魚を釣っているというわけだ。
「ふぁ……ぁ、かからねぇなぁ。っと」
光昭は釣りは素人である。水面下の釣り針についた餌だけ食われて魚に逃げられているなど気づいた様子もない。長時間座り続けてこった体をほぐそうと立ち上がると、凝り固まった体が動き出した筋肉に順応できず、バランスを崩すのは至極当然のことだろう。加えて光昭は自然に対しても素人であった、周囲は草むらであり、足元は見えづらい、にも関わらず見当ハズレに動いたために隠れていた草の根に足を引っ掛けさらにバランスを崩し、落ちた。
バシャン。という水音に周囲の生徒は反応する。大きな石でも落としたような水音だ、誰かが落ちたと察するには自然に疎い彼らとて容易いことだった。光昭は水中で上下がわからぬままもがいている。誰かが大声で教師を呼んでいるのがかろうじて分かる程度だ。先刻湖で悪友と遊んでいた時にはこれまでの深さではなかったと脳の片隅で考えるも、ついに閉じていた口が力を失い、空気がハイから漏れ出し……気を失った。
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