YUKI 2016-11-19 22:11:18 |
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続いて茅人は手紙を開いてみる。
懐かしい汐の言葉は、変わらず優しく思えた。
『茅人君へ。約束の本が出来たので店に送ります。直接渡せなくてごめんなさい。やっぱり、顔をあわせるのは気まずくて、こんな形にしました。あの日、茅人君に言った事に、後悔はないの。茅人君がちゃんと訳を言ってくれて凄く嬉しかったわ。それでね、この気持ちを小説にしたのが『胡蝶と夢の亡者』です。登場人物も年齢も、振られた理由も違うけどね。読んでくれたら嬉しいです。最後に、私、茅人君を好きになれてよかったわ。今までありがとう、元気でね』
汐の手紙を読み終えた茅人の心は、なぜか穏やかだった。
あのプラネタリウムの別れから、寂しさやむなしさが常にあった心は、それらが夢のように消えていく。
もう、会う事のない人に救われた心は、過去の傷も近い未来癒すだろう。
そんな事を思い、茅人は店の開店準備に戻った。
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