YUKI 2016-11-19 22:11:18 |
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あれから四ヶ月、汐は店に一度も来ていない。
連絡もこないし、茅人もしていないままだ。
汐がいなくなって少しだけ寂しくはあるが、それは茅人が思うべき事ではない。
いつものように開店準備をしていると、店のマスターに厚手の茶封筒を渡された。
宛名の住所はこの店、宛名は『園崎茅人様』と書いてある。
「確かに渡したからね。開店までまだ時間があるし、中見てみたら?」
マスターの去り際の言葉に頷き、封筒の裏を見ると知らない住所とよく知った名前が書かれていた。
水無月汐、汐のフルネーム。
それはつまり、この封筒を茅人に送ったのは汐であるという事だろう。
少し分厚い封筒を、店のペーパーナイフで慎重に開けると、中からは一冊の小説と、短い手紙が入っていた。
小説のタイトルは、胡蝶と夢の亡者。
薄紫の蝶が舞う、淡い表紙である。
その表紙は、実に汐らしく思えた。
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