YUKI 2016-11-19 22:11:18 |
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自由席と入場券には書いてあったので、二人は出入口近くの人の少ない席を選ぶ事にする。
席に着く汐の姿に変化はない。
茅人も落ち着いた気持ちで、隣に座る。
数分の時が流れ、室内が濃い暗闇に変わった。
(始まったな…)
内心呟く茅人の隣で、汐も同じ事を思っているのだろうか。
「私ね、今日は茅人君に謝らなきゃいけない事があるの。そのまま聞いていて」
囁きにも似た小さな声は、おそらく他の人々には聞こえていないだろう。
「わかりました」
返事をする茅人の声も、また微かなものだった。
だがそれは、汐の耳に届いてくれたようだ。
「仮の恋人を頼んですぐなんだけど、あの話、なかった事にしてほしいの」
汐の言葉に茅人は小さな驚きを抱く。
だがそれを茅人は表さず、努めて冷静に聞き返す。
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