赤傘の名無し 2016-10-18 23:03:33 |
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歩き続けること更に数十分。足が棒になるとは正にこのことで、私はそこらに生えてる木を支えにしながらふらふらと歩いていた。
今更ながらこれはいわゆる遭難なのだろうかと思ったが、だからといってどうすればいいかなんて分からないし、じっとしてもいられないので歩き続ける。
途中途中でスマホを再度確認するが、相も変わらず圏外のままだ。
あまりに暗いのでスマホの懐中電灯機能を使おうかとも思ったが、あまり電池を消費するのは良くないだろうと思いつけなかった。
いい加減暗闇に目が慣れてきてはいる
が、それでもまだ暗い。…恐い。
このまま、このよく分からない知らない森の中をずっと彷徨い続けるのだろうか。どこにも出れないまま、帰れないまま。
こんなに暗いのは夜のせいだからだということは分かっているが、この闇が永遠に続くようなそんな錯覚に陥る。そのせいか気分もどんどん落ち込んでいった。
「……ここ、どこぉ…。誰かぁ…。」
少しでも元気を取り戻そうと一人で喋ってみるが、自身の声があまりに力なさすぎるのでなんだか逆に泣きたくなってきた。
遂に涙腺までやられそうになったその時、私の視線の先に光が映った。
唯一私の心の支えになっていた月の光よりも明るい、赤い光。
誰かいるのかも……!!
何の光かは分からないが、少なくとも木や草じゃない何かがある。近くには人がいるかもしれない。
そう思うと今まで感じていた疲れも忘れて、私はその光に向かって走り出した。
たぶんあそこに行けば人に会える!そしたら道を訊いて…きっと家に帰れる!
ああ、今何時くらいなんだろう。さっきスマホで確認したときはもう結構遅かったし、お母さん心配してるだろうな。
……怒られるかな、怒られるのはやだなー…。
そんな事を考えながらも、助かったと思うと自然と笑みがこぼれていた。
もう少しであの赤い光の元に着くというところで、光に照らされて揺れる人影のようなものが見えた。
やっぱり…!誰かいる!!
「あの…!」
草を掻き分け、はやる気持ちのままに私はその人影に向かって声をかける。
たぶんその時の私は髪の毛もボサボサで、服とかも泥で汚れまくってて、虫刺されで肌もところどころ赤くなってて、さぞかし滑稽な姿だったことだろう。
しかしそんなものを気にする余裕もないくらい疲れていたし、何よりも人がいるということに安堵していたのだ。
だけど、木々の合間の少し開けた場所に駆けこんできた私の目の前にまず映ったのは鋭い何か。
そしてそれをこちらに向かって差し出している、全身真っ黒な服で顔さえも覆っている怪しい人物。
何が起こってるのか分からず、数度瞬きを繰り返しながら差し出されているその何かを凝視する。
それは、長い長い一本の刃物……いわゆる、剣。
剣の切っ先がこちらに向けられているのだ。
その時、頭のなかでプツリと何かが切れるような音がした気がした。瞬間、暗転していく視界とふわふわと宙に浮かぶような感覚に見舞われる体。
ああ……私倒れてるんだな、なんてやけに冷静な感想を最後に、私は意識を手放した。
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