北風 2016-09-11 16:47:48 |
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「はぁっ……はっ……はぁっ……ゲホゲホッ……ぐぅはっ……あ゛あ゛…………」
逃げ続けてもう何時間経ったのだろう。
私の疲労はピークに達していた。
「あぁ……はぁ…………ちょっ……ちょっと休憩……」
幸い今は追っ手の姿が見えない。
一応上手く撒く事が出来たようだ。
まだ安心は出来ないが、とりあえず足を止めても大丈夫だろう。
私は暗い路地裏に入ると、置いてあったゴミバケツに腰掛けて深呼吸した。
「はあぁぁ…………本っ当に疲れた……」
落ち着いてくると、今までは感じる余裕も無かった恐怖がじわりじわりと湧いてくる。
――私、捕まったらどうなるんだろう…………。
最悪の事態を想像して、私は思わず身震いをした。
「い、いや……私なら逃げ切れるよ……うん、きっとそう……………………ぅぅ……」
恐ろしい考えを頭の中から追い出す為にそう自分に言い聞かせるものの、何だか逆に悲しくなった。
「…………もうやだ……」
絶望的な気分になり視線を足元に落とすと、ゴミ袋の上に乗ったネズミと目が合った。
昨日までの私なら飛び上がって悲鳴をあげる所だが、今はそんな体力も気力も無い。
「ははっ……もういっそネズミになりたい……」
ドブネズミみたいにじゃなくてドブネズミそのものになりたいよ。
「ぷくくっ…………ふっ………」
「!?」
頭上から押し殺したような笑い声が聞こえて、私はバッと顔を上げた。
「あ、気づいた? いやー、君面白いねぇ」
いつの間にか目の前には一人の少年が立っていた。
「うわっ!? うわわわわわわわわっ!?」
とっさに逃げ出そうとしたが、疲れの溜まった足は思うように動いてくれず、私はゴミバケツ諸共地面に倒れこんだ。
「だ、だだだだだ誰っ……!?」
それでも尚逃げようと座り込んだまま後退る私が面白かったのか、少年は再度噴き出した。
「ぶはっ……はははっ……怯え過ぎだよぉ、ボクどう見ても君に危害を加えられるような体じゃないでしょ?」
確かによく見てみると、少年は14歳くらいの幼い顔つきだ。
体系も細めで、見るからに非力そうだ。
でもそういう問題じゃない。
ヤ●ザに追われている最中に話しかけられたら誰だってびっくりするわ。
私の怯える姿がそんなに面白いのか。
「…………」
私が無言で少年を睨みつけると、少年はやっと笑うのを止め、座り込む私に手を差し伸べた。
「いやー、大変だったね、蛍ちゃん。ボクでよければ匿ってあげるから、ついてきな?」
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