北風 2016-09-11 16:47:48 |
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「わぷっ!?」
『それ』は私の体に覆い被さるように倒れてきた。
私は何とか『それ』を受け止めるものの、バランスを崩し、少年のいる方向へと倒れていってしまう。
「おっと」
「ぎゃ!!」
避けられた。
転びそうになっている女子を避けるなよ……。
結局転んだ私が、地面に横たわりながら恨みを込めた視線を投げかけると、彼は「ごめんごめん」と笑いながら私の上に乗っている物体を退かす。
「うひゃっ……!」
『それ』を見た途端、私は思わずビクリと体を震わせた。
私を大胆にも押し倒してきた『それ』は、小学校の理科室とかでよく見かけるような、人体の骨格標本だったのだ。
「あーあ、ヒオったらまたこんな所にこんなもの置きっ放しにして~」
少年は骨格標本の首根っこを掴むと、呆れたようにそう言った。
どうやら私の心配は全くしていないらしい。
うん、まあ別に良いんだけどね……。
丈夫さには自身があるしさ。
……ていうか、『ヒオ』?
中に誰か居るのだろうか?
私は身を起こし、骨格標本の手によって開け放たれたドアの向こうを覗き込む。
「おおっ!?」
予想外の光景に思わず声が出てしまった。
外から見ると、完全に廃墟だった鴫羽荘。
その内観もボロいものを想像していたが、どうやらとんだ勘違いだったらしい。
明るい白熱灯。
フローリングの床。
白く清潔な壁紙。
どこからどう見ても、ごく普通の住宅の内装だ。
外観とのギャップが半端ない。
私が唖然としていると、少年が骨格標本を片手にぶら下げたままにこりと笑って言った。
「ね、だから言ったでしょ? 鴫羽荘は蛍ちゃんが思ってるような所じゃないって」
確かにそうだった。
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