北風 2016-09-11 16:47:48 |
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どうして私の名前を知っているのか、とか。
いつから私の様子を見ていたのか、とか。
て言うかそもそも見てたのなら隠れてないで助けてよ、とか。
色々言いたい事はあった。
でも言いたいことを全部言えるほど元気じゃ無かったのも事実だ。
その時はとにかく疲れていたので、あいつらに見つからない安全な場所でゆっくり休むのが私の中での最優先事項だった。
『匿ってあげる』
そんな状態の時にそう言われた私の口からは、一言しか出て来なかった。
「か、匿ってください!」
そして五分後。
「あ、あの~……やっぱりそこまでして貰わなくても~って……思えてきたんだけど…………」
私は少年の服の袖を掴みながら震えていた。
「え? 何で?」
そんな私の態度の急変を少年は不思議に思ったらしく、私の顔を覗き込んできょとんと首を傾げた。
「どしたの急に他人行儀になっちゃってー。気ぃ遣わなくても良いんだよー。蛍ちゃんとボクの仲だし」
いや今会ったばっかなんですけど……。
私は君の名前すら知らないんですけど……。
あ、いや、そんな事言ってる場合じゃ無くて!
「や、やっぱ私大丈夫だから! もう元気になったんで! じゃ、私はこれで!」
私はそう少年に告げると、くるりと回れ右して素早くその場を立ち去ろうとした。
だが……。
「え、ちょ、待ってよ! 蛍ちゃん! 何で逃げるのさぁ?」
がしっと少年に手を掴まれてしまった。
うう…………。
確かに少年からしたら私はいささか挙動不審かもしれない。
でも私にはもう少年に付いていく勇気が無かった。
だって――――この子さっきからどんどん心霊スポットに向かって歩いて行ってるんだもん!!
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