八咫鴉 2016-08-27 17:34:53 |
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(俄かに信じがたいが煽りに乗り根拠のない自信に満ちる彼を見ていると犠牲も厭わないと一時の現実逃避に至り。普通普通と有触れを表現することは良きとしないが、それでも普通ならば久しぶりに戻る故郷で唐突と閉じ込められてその先に人ならず物が存在していれば恐れに慄き恐怖に溺れる事は予想が出来て、近づいても尚、この手でその肉の柔らかさを触れても尚、眼を見開く事も無く阿鼻叫喚の渦を作る事も無く現状を受け入れ、そして壊そうとする彼に興味を持つなと言う方が難しく革越しとは言え十二分と伝わる柔らかさの余韻を握りつぶす様にぎゅうと掌を握りしめ、落ち着きに一晩でも二晩でも時間を要するかとも思えたが。流石巫女候補と言うべきか、見縊ったことを胸中に考えを改め「無償で教わろうとは図々しい奴だ。__丁度良い、自分の目でそれを見届けろよ」最初にはからかい交えた意地悪を一つ、しかし右往左往と外に現れただろう妖の存在に気が付けば悪戯と愉しげに両の目を吊り上げ飢えを滲ませ唇を舐めり外へ繫がる引き戸へ手をかけて、彼の進むことのできない外の世界へなんの障害一つなく踏み込むと音を潜めるようにヒタヒタと草を踏む軋み一つ上げ無い様に黒く影を纏った禍々しいそれへ近づいて。大きな月光を背負えば逆光に紛れ喰らいつき呑み込むよう、あっと言う間に背丈ほどかそれ以上の影を吸い込んで。「巫女の力が弱い影響で、直ぐにこれらが沸き立つ。喰らっても喰らっても、終る事無くまた生まれる。ちびっ子、お前が結び目の見えない記憶の糸をさっさと解かなければ…巫女がいなくなりゃ俺も共に消える。残るのは――」リンリンともカナカナとも聞こえる虫の音を遮るように最後には云わなくとも理解が出来るだろうと答えを伏せて。時折ゆらりと吹く温い風に羽を揺らしつつ今度は音だけは愉快と下駄の音を鳴らして「いっそ、両の四肢を捥いで眼を刳り貫き舌をちょん切る。何一つ自分じゃ出来ないほど不自由なそれが自由だと思う程、身勝手な欲に選ばれたのがちびっ子、お前だよ」一度この地を捨てる程自由に焦がれる彼ならば此処に閉じ込められるそれは違い無いと色の違う二つの眼で彼の事をじっと見つめ、再び邸へ戻ると虫の音を遮る為パタン、と後ろ手に扉を閉じて)
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