無名 2016-08-15 15:44:54 ID:16c2a71f2 |
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私たちのご飯は朝と夜の二回だけ。
加えて私も兄さんも育ち盛り。
きゅう、と私のお腹がご飯はまだかと抗議する。
男は表情ひとつ変えずに暗証番号を片手で解き消えていく。
部屋の中は、私と兄さん、踏み潰されたパンだけ。
「…………祷。」
いつもとは違う鋭い声。怒っている証拠だった。
切られていないせいか、目が隠れるくらいまで長い赤髪のせいで兄さんの表情は分からない。
だけれど、いつも以上に怒っていることが、分かった。
「何?」
前髪が分けられ、兄さんの瞳が見える。
優しい鶯色の瞳には、底無しの闇が含まれていた。
「……ここから逃げよう」
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