xxx 2016-05-20 12:45:36 |
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(駆け出していく相手をすぐに追おうと立ち上がろうとするが、地面に手をついた瞬間傷がズキリと痛み一瞬動きがとまってしまい、それが大きな遅れとなって路地から出る頃には相手ははるか遠く、追いつけそうにないと諦め一度取引主のところへ戻ろうとしたところ黒い影が前に立ちふさがり、顔を上げれば自分の組織の男達がいて。
『どういうつもりだ』
「なにが…」
『とぼけるな。たった今、敵対組織の男を助けただろ。もっと暴れさせればいいものを』
『まさかお前、まだあの餓鬼と仲良しごっこしてるのか?』
「さあ…。でもあのままにしておけば町民はもっと混乱していた。俺は今あの取引主の護衛だから騒ぎを収めて当然だろ。何もしないほうが問題だ」
『はっ、それで言い逃れできるとでも?……いいだろう』
(そう言うやいきなり胸倉を捕まれ引き寄せられれば耳元で『子ども…』と囁かれピクリと反応し男を睨むも、男は意に介さず不敵に笑み『身寄りのない孤児荘の餓鬼は売りやすいんだよなァ』と嫌味ったらしく述べては乱暴に突き放され『監視、つけるからな』と言い残しその場を去っていき。
一人になった路地、男の言葉や先程の相手の困惑したような辛い表情が浮かんではやりきれない想いがこみ上げてグッと拳を握る。
動物が持つ特有の毒のせいか、指先がドクドクと熱を持ち始め痛みが増していきジワジワと胸の奥に響いてきて。
(簡単に指の手当てをした後、取引主の元へ戻ってみれば既に騒ぎは収まっていて、自分の姿を確認するや否や肩を捕まれ、相手はどうしたかと凄い剣幕で聞かれ。
『そうか…、では身体は無事なんだな。……しかし誰がこんなことを』
「___。怒ってないのか?……俺のことも」
『フン、あれしきのことで名声が下がるわけあるまい。それに猫被りは元々気づいてたわ。見くびるな』
「……。あいつを手放す気はないのか」
『当然だ。あれほどの美しく珍しいもの、儂の手にあってこそだ。ああ、取引なら心配するな。爛さえ戻れば平等にやってやる』
(先程の騒動で狼狽えていたのが嘘の様で、相手が孤児荘を切り盛りしていることを知っててか部下に明日にでも孤児荘に大量の食料と生活用品を送るよう指示していて、このままでは相手が男の手に落ちてしまうと焦るも、ついさっき組織に釘を刺されたこともあり止める気力は起きずに。
(翌朝、自宅で目を覚まし寺子屋の準備をしていると女教師がやってきて手の怪我を酷く心配されるが本当に大したことがなかったため大丈夫と微笑み返すも、相手の昨夜の様子が頭にこびりついて離れず、体調も心配でずっと浮かない表情をしていたのは気づかず。
そして子供たちを出迎える時間、門の入口に立っていると現れた相手の姿に目を見開く。
その何処か憔悴した様子にやはり薬が抜け切れていないかと思わず身を案じようとしてしまうが、組織の“監視している”という言葉がチラついてはグッと堪えて。
「何しに来た。……あんたは俺の敵なんだろ?…こんなところまで来られては迷惑だ」
(子供たちに聞こえないよう小声で、しかし突き放すように冷ややかに述べる。
急変する態度は違和感そのもの。目を見ると本音が溢れてしまいそうなため視線はずっと地面に向けられたままで。
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