xxx 2016-05-20 12:45:36 |
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(豪邸に着き案内された部屋に入った瞬間、目に飛び込んできたのは狼姿の相手。
驚きと共になんてめぐり合わせが悪いんだろうと自分の運の悪さを恨む。
加えて、取引主は相手の姿に釘付けで此方に気づいても『後にしてくれ』と全く見向きもせずに。
正直この仕事も組織の男の我儘。相手の仕事をこれ以上邪魔したくないしこのまま帰ってしまおうかと半ば思うが、部屋のあちこちに飾られる数多くの鹿や狐の剥製、趣味の悪い獣皮の絨毯、男の纏う毛皮の服、そして相手を嘗めるような視線。
はっきり言って嫌な予感しかせず、身勝手ながら“その目で相手を見るな”と独占欲が沸いては、相手に疑念を抱いていたことなど忘れてスタスタと前へ出ると、相手を背後へ隠すように取引主の前に跪いて。
「お取り込みのところ申し訳ありません。私は貴方様の護衛をしたく組織から参った者です。失礼を承知で申し上げますが、今なさろうとしている取引、辞めておいたほうがいいですよ」
(外向きようの笑顔を貼り付け普段より2割増しで声に色を乗せては、まだ煙たそうにする取引主に一枚の紙を渡す。
そこには相手組織をこの取引から失脚させるために調べ上げた相手組織のこれまでの失態や悪行が記されており。
「そこに記されている通り、その組織の幹部は頭が弱い。此処に危害が及ぶのは時間の問題です。私は貴方様の築き上げた美しい名声に泥を塗りたくない」
(心から願うよう切なさを滲ませ述べるも、内心は取引さえ破棄できれば相手は取引主と関わらずに済むというあまりにも身勝手な私情。
再度取引の決定を考え直すよう願い出て跪いた状態で頭を下げるも、取引主の視線がいまだに相手にあることが嫌でもわかり、見えないのをいいことに唇を噛み締めて。
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