匿名さん 2016-05-12 23:16:13 |
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何が起きたのだろうか、それは判明出来ないものの軽くなった足取りをスタスタと進めながら木々を避けつつ、歌声が聴こえてくる方へ進んでいく。それにしても、と女は心の中で思った。自分としては初めて訊いた筈にも関わらず、この歌はどこかで聴いたような、そんな懐かしさを感じた。これがいわゆる、既視感というものなのか。
しばらく歩いていくと、先程まで木々が邪魔していた場所とは異なりそこだけがぽっかりと何もなく、草花がちらほらと生えている地面が丸く広がっている所に着いた。枝もないので、淡く優しい月の光が一気に体へ当たった。
そして、少し離れた距離に一人の少女が立っている。歌声の持ち主であろうその少女はこちらに背を向けているため、顔は伺えないが自分の真っ直ぐな髪とは違い、緩くウェーブのかかった長い金髪はまるで絹のようだ。白いワンピースをヒラヒラと優雅に揺らしている。美しく、それでいて儚くも聴こえる歌を歌っており、夢中になっているらしく背後にいる女の事にはまだ気が付いていない。
女は少女のハッキリと聴こえる歌声に心を奪われた。声の調子は勿論、歌唱力もかなりある。女は感嘆による溜め息を漏らす事は愚か、しばしその場から意識的に動く事も出来なかった。
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