藤村伊織 2016-05-07 12:59:57 |
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…俺が頭から離れない?それはあの時抱き締めたからか?あれが俺じゃなく、仮に体力バカだったとして……それでもお前は同じ事を言うんだろ?(やがて目元を覆っていた腕が外され、泣いた跡を残したままの相手と視線が合う。真面目で嘘が下手そうな彼の言葉は己を期待させるものでしかなく、鼓動がドクンドクンと加速していく。彼が自分を気に掛けていてくれてる事は確かだろうが、そのきっかけとなったのはあの行動。ならば相手が誰であろうと同じ道を辿る事になったのではないか。そんな風に卑屈な考えが過れば胸がざわめき落ち着かなくなる。自分だけを見てほしい、自分だから意識していると思いたい、そんな思いが彼を咎めるような口調にしてしまう。眉間に皺を寄せ何処か苦しげな表情で見下ろしていたが、最早この感情を抱えたままでいる事に堪えられず観念し。何か吹っ切れたようにも取れる溜め息を小さく吐けば、相手との距離を詰め改めて見つめ直して。「…忘れなくていい。忘れるんじゃねぇ。今までの俺も、これからの俺も、お前の中にしっかり刻み込め」真っ直ぐに捉えたまま言葉を紡ぐと、緊張からか漸く己を解放出来る喜びからか、より鼓動が騒がしくなり、細められた瞳が揺れる。しかしそこにもう迷いはなく、引き寄せられるように唇を重ねるとゆっくりと離し。至近距離のまま見つめては、秘めてきた想いを言葉に変えて)
──…お前が好きだ。
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