何とも身勝手な祈りである。暫くして医者が帰った、母親は頭が痛いのだろうか。眠る聡一郎から離れ、何処かへ行ってしまった。きっと、彼女も眠りに行ったんだろう。そっと、青年の顔を覗き込む。青年の唇の端に付いた赤、これは先程青年が口から吐き出したもの。拭ってやろう、舌で舐めるとそれは鉄の味がした。青年は血を吐いたという事だろうか、再び呆然と青年を見つめてしまう。