フルムーン 2016-05-03 02:16:08 |
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青年は山の様に詰まれた本の中から一冊、本を手に取り僕の元へ歩み寄って来た。
先程迄の警戒は嘘の様に解いてしまって、僕は青年が隣に座るのをじっと見ていた。
栞の挟んだページを開けば僕の前に置き、青年は何処か楽しそうで、しかし憂う様に微笑んで一言漏らした。
「紫苑、どうか君は私を忘れずに居ておくれ。」
青年はかなりの心配性だ、僕はそれ程に記憶力が悪い様に見えるのだろうか。全くもって不愉快である、しかし青年の憂いを帯びた眼差しを見ると僕は静かに尻尾を振った。
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