フルムーン 2016-05-03 02:16:08 |
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この人間は僕に名を付けて楽しいのだろうか、しかし呼び名があるという事には少し憧れた事もあった。
呼び掛けられてみたい、僕と話したい猫に名を教えてみたい。
そんな子供染みた欲、随分前に諦めた。
付けるならば勝手に付けろ、そう言うように一声だけ鳴き声を上げた。
すると青年は僕の意図を理解したかの様に微笑み、また口を開いた。
「有り難う、ならば…そうだ。紫苑という名を付けても良いだろうか、私の好きな花の名前なんだ」
シオン…僕の名はシオンか。これは良い、とても呼びやすい。
沸き上がるこの感情は、僕はきっと喜んでいるのだろう。ごろごろと鳴らす喉の音は何よりの証明だ、僕はこの青年をとても気に入った。
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