ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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■ 魔法具屋に行ってみよう ■
Eランクに昇格した俺は、これまで出来なかった魔物討伐が出来るようになった。
魔物討伐は一人でも出来る事は出来るが、それは上級冒険者に限る。
俺みたいな駆け出し冒険者が一人で魔物を狩れるのは、精々1体か2体が良い所だろう。
それ以上の数で束になって来られれば、普通は返り討ちにあって魔物の餌となる事が目に見えている。
そんな事から魔物討伐ともなれば三人以上のパーティーを組まなければならない。
しかし困った。
俺にはパーティーを組めるような知り合いなどいないのだから。
そんな事を考えながらギルドの扉を開けると、俺が来るのを今か今かと待ち構えていたかのように、中に居る冒険者達の視線が一斉に俺の方に注がれた。
そんな厳つい躰で獣耳生やして見られても、可愛くもなけりゃ癒しにもならないからこっち見んなし!逆に怖いわ!
そんな男達が俺の姿を見るとワラワラと俺の周りに集まって来た。
「お前がシオンか?」
「ああ、そうだけど」
「よし。ならお前は今日から俺達のパーティーに入れてやる。有難く思えよ」
いきなりのパーティー勧誘だ。
「はぁ?!何言ってんだお前!そいつは俺達とパーティーを組むんだよ!」
「おぃおぃおぃ。お前こそ何言ってだ。ワイらと組むに決まってんだろ」
近寄って来た男共は口々に勝手な事を言って来る。
どいつも自分達のパーティーに俺が入る事が前提らしい。馬鹿馬鹿しい。
「悪いけど俺は何処のパーティーにも入らないよ」
「ああん?!テメェせっかく俺様が誘ってやってるのに断るって言うのか!」
上から目線で格下扱いされての誘いになんか乗るかっちゅうの。
「はい。既にパーティーには入ってますからね」
嘘は言ってないぞ。俺はロジャーのパーティーのメンバーだ。
今は一時脱退状態だけどな。
ロジャーは戦争が終わったら迎えに来てくれるって言った。だから俺は待つ。ロジャーが来るまでな。
「ほぅー。一体何処のパーティーに入ってるんだ」
「《イカヅチ》人大陸に他のメンバーはいる」
「何だお前、本当は出されたんじゃないのか?!」
周りの冒険者達から一斉に笑い声が上がる。アハハハハ。
笑たけりゃ笑えばいい。そんな事は昔から慣れている。
魔術もろくに使えない役立たず。出来損ない。ごくつぶし。そんな風に言われて嘲笑われて生きて来たんだ。ロジャー達に会うまではな。
俺には俺の生き方がある。恩を返さなきゃいけない人が居る。俺はもっと強くなってロジャーの役に立ちたいんだ。
だからこれ位の事では動じない。笑いたきゃ笑っていろ。
俺は、その人だかりの中から出て依頼書の前まで進んだ。
どうせ俺に声を掛けて来たのだってシルバーが目当てだったんだろう。あの猛毒の糸の毒を抜けるシルバーを使って荒稼ぎでもしようと思ってたんだろうな。そうは問屋が卸すかってんだ。金が欲しけりゃ全うに仕事をしろ。楽して金が手に入るとは思うな。クズが。
暫く依頼書を色々と見てたが、これと言って良い仕事が無さそうだ。
そうだ。この間買った錬金術と魔術の本を見ながらいろいろと試してみるのも良いかも知れないな。
しばらくは働かなくても良い位の金も入った事だし。
さっそく宿屋に戻り本を広げて読みふける。
錬金術で重要なのは、精神統一と念じる心らしい。後は、才能だ。
志が人一倍あっても出来ない奴は出来ない。
回復薬を作ろうとしても、コポコポと泡立つ得体の知れない何かが必ず出来てしまう。それが何なのか飲んでみる度胸のある奴が居るだろうか。俺なら飲まない。
絶対おかしいだろ!そんなの!
俺の経験上そう言うのは毒系統だと決まってるからな。
まぁ、回復薬程度なら何か知らんが俺でも造れるんだ。昔ちょっと練習したら作れるようになったんだよ。問題は武器だな。
確か袋の中にタランの牙があったな。これで武器が作れないかな。
えっと。元になる武器と強化材料の魔物の部位と、鉱石か。
なになに。鉱石の種類によって付与付になるか。鉱石は鉄でいいか。沢山あるしな。
で。どうやってやるんだ?
あー、そうですか。そうですよね。
錬金釜に入れないと出来ないんですね…。って、初めて聞いたわ!!
錬金釜なんて何処に売ってるんだ?道具屋か?
けど、今まで一度も見た事が無いぞ。
分からない事はギルドに聞けば良いか。
さっき訪れたばかりのギルドに再び趣き、暇そうにしている受付の前に行った。
「こんにちは」
「今日はどうされましたか」
うん。マニュアル通りの受け答えだ。
「教えてほしい事があるんですが、いいですか?」
「私に分かる事でしたら、どうぞ」
分からない事は調べてもくれないって事か?大丈夫か、この人で。
「錬金で使う釜ってありますよね。それは一体何処に行けば手に入るんでしょうか」
「釜ですか?魔法具専門店に行けば買えるんじゃないですか?
結構値がありますけどね」
「因みに幾らくらいの物なんです?」
「そうですね…。ピンキリで、安くて金貨5枚。高いのだと金貨30枚と言うのもありますよ」
「やはり値段が高い方が性能が良いんでしょうか」
「そうですね。ある意味そうかも知れません」
歯切れの悪い受付嬢にもう少し突っ込んで聞いてみる。
「ある意味とは?」
「金貨5枚程度の釜ですと、錬金するのに丸三日ほどかかります。
金貨が30枚の方は半日程度で錬金が可能になります」
「なるほどー。分かりました。有難うございます」
急ぐものじゃないし、取り敢えず練習用に安いやつでも買うか。
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