転生乱舞 ~ 目が覚めたら其処は 異世界だった

転生乱舞 ~ 目が覚めたら其処は 異世界だった

ムーン  2016-02-18 17:52:07 
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親に引いて貰ったレールの上を、何不自由なく生きてきた28年。
旧帝大を卒業し、一流企業に入社。

出世も仕事も順調で、後は嫁さんを貰って勝ち組イエーイ♪
の、はずだった。

仕事で三カ月の海外出張が決まり、その仕事もそつなくこなす。
そして帰りの飛行機の中で…、事件は起きた。


初めはハイジャックかと思ったが、テロだった。
それも自爆テロ。

犯人の動機も目的も、何もわからないうちに飛行機は爆破された。

そして、俺が目を覚まし、気が付いた時には、そこは異世界だったのだ。

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  • No.85 by 匿名さん  2016-04-23 01:00:19 

===== 



「良いのかい?あの子を置いて来て」
「町の中なら安全なんだろ?わざわざ危険な所に連れて行く必要はないさ」


パッド君に記されてる薬草の群生地に向かい、両脇に草原が広がる街道を森に向かって歩きながら話す。

「ところで、何で俺と一緒に行こうと思ったんだ?」

昨日ギルドで合った時は、ジョシュは魔術師特有のローブを被り顔が良く見えなかったが、今日はローブについているフードを被っていない為、良く見える。
魔族は一様に中性的な姿形をしているが、ジョシュも類に漏れず中性的だ。
大人なら男性か女性なのかが分かるが、子供は見分けがつけづらい。
かと言って、男女どちらなのかと聞くのも憚(はばか)れる。
だから俺は、俺流の判別をした。
男なら真っ平。女なら出てる。そう、胸の凹凸で判別した。

チラッチラッっとジョシュの胸に視線を置き、真っ平な事を確認する。
おし!男だ。一人称も「僕」だし間違いない。
自分の中でそう納得していると、ジョシュが答える。

「インスピレーションかな?僕の勘なんだけどさ、ハルシオンは優しそうだな
 って思ったんだ。嘘をついたり人を騙したりしなさそうだなってね」
「それだけで?」

「それだけで十分だよ」
「なら、俺の事はシオンって呼んでくれ」

「分かったよ。シオン」

話しをしながら歩いているうちに、薬草の群生地に到着した。
比較的森の浅い場所に生えている薬草は、赤い薬草と緑の薬草だ。
だいたい十株程が点在していた。

俺達は薬草がまた生えてくるように、土に中にある株を残し表面の葉っぱだけを丁寧に短剣で切り落とし、バラバラにならない様に紐で縛り自分の袋の中へ入れる。
パッド君があるおかげで俺達は結構な量の薬草を採取する事ができたが、それでも換金をすれば一人大銅貨二枚程度にしかならない。

ギルド経営の宿に泊まるならこれでも良いが、出来ればもう少し稼ぎたいところだ。
そうだな…ツルギ草あたりがどっかに生えてないかな…。
パッド君で検索してみるか。

おお。あるじゃないか。
少し奥には行った所に結構あるな。画面が真っ赤だ。
(検索対象物は赤い点で映し出される)
パッド君を見ながらブツブツと独り言を言っていると、ジョシュも俺と同じ考えだったのかツルギ草の在りそうな所まで行ってみないかと提案してきた。

「大体の場所は僕が知ってるから案内するよ」

俺はジョシュの後について森の奥へと歩いて行った。
十五分位歩いた所で、俺の索敵に反応が出た。数は一匹。大きさは2m弱。
種類は何だろう。そう思っていたらシルバーが呟く。

『この匂いはタランだな。巨大な毒蜘蛛だ。注意しろよ』
了解。

「魔物が近くに居るぞ」
「えっ?分かるのかい?」

「ああ」
「それはやっぱり・・・・君の相棒が教えてくれてるのかな?」

「相棒ってシルバーの事か?」
「そうだよ。・・・・・だってそれは・・・・ベルガーだろ?」

俺は驚いてジョシュの顔を見た。

「そんなに驚く事かな?って、もしかして今まで誰もベルガーだって知らなかったの?」
「・・・・いや、俺と俺の仲間は知ってたけど、人大陸では「犬」で通してた」

「犬だって!?それを皆信じてたって言うの?!」
「うん。誰も疑ってなかったよ」

「あははは。それは凄いねー」

人大陸で妖狼など見る機会など全くと言って良いほど無い。
だから大きな犬と言っても誰も疑わなかったが、ここではたまに妖狼を見かけるらしく、もし見かけたとしても、こちらから攻撃をしない限り襲っては来ないので、静かにその場所から離れる事が長生きの秘訣だそうだ。

「それにしても良く懐いてるよね」
「まぁね」

シルバーが従魔だっていう事は黙っていよう。
どうやって捕まえたとか、どうやって契約したとか聞かれても俺にはさっぱり分からんし。
いつの間にか主従の契約をしてたからな。聞かれても分からんよ。

森の真ん中で立ち止まり、小声で話していたら、タランの気配が段々と此方の方に近付いて来るのが分かる。
そのまま俺達に気が付かないで横に逸れてくれと願っていたが、どうやらその願いは叶わない様だった。

斜め前方の木の枝や草がわさわさポキポキと音を鳴らすのが聞こえる。
距離にして100mまで近付いて来ているのが索敵で分かる。

俺は腰に挿している剣を抜き構え、ジョシュは呪文を唱え掌に野球ボール大の光の玉を作ると、二人とも臨戦態勢をとる。

木々の間には生い茂る草。
その隙間から黒・黄色・赤で彩られた派手な配色が見え始めた。
流石に50mまで近寄れば臭いで分かったのだろう。
タランはピタリと止まり、一瞬の間を空けて此方へと突進してきた。

「来るぞ!」

俺はそう叫びながらタランに向かって走り出す。
虫の倒し方は知っている。
ロジャー達と何度も迷宮で戦ったから。
まず足を切り落とす。動きを封じるためだ。
毒を吐いてくる奴は、毒を吐こうと口を開けた瞬間に胡椒の様な刺激物を口の中に放り込む。この役目はいつも俺だったので自信はある。

俺は無限袋から胡椒袋を取り出しタイミングを見計らいながらタランとの距離を詰めていく。
タランは口から毒を纏わせた糸を吐こうと大きく口を開けた。
俺はそのタイミングを見逃さず、既に右手に握っていた胡椒袋をタランの口目掛けて投げつけた。

胡椒袋は吸い込まれるようにタランの口の中に入り、タランは大きく咽た。
息が出来ないのか悲鳴が聞こえる。

―ギギギィィィィ!

動きが乱れたのを確認して、俺は一気にタランの足元を攻める。
ロジャーが何時もやってた様に、前方右足を切り落とし、S字を書くように蛇行しながら後方左足を切り落とす。
左右纏めてやるよりも、切り落としながら魔物の体の下に潜った方が、魔物からは死角になって成功しやすいそうだ。

俺がある程度足を切り落とし終わると、今度は遠距離魔術師の出番だ。
動かない魔物は巨大な的にしかならない。
当て放題だ。

「後は頼んだ!ジョシュ!」
「任せろ!」

ジョシュは掌に作った光の玉をタランの頭目掛けて放った。
多分あの技は雷系の魔術だろう。
頭に当たった瞬間に火花の様な物が見えたからな。
何の属性の魔術を使うのか聞いてなかったが風属性だったのか。
魔族は髪の色で属性判断が出来ないからちょっと不便だね。

タランの急所とも言われる頭に一撃を加えたが、まだ息があるようだ。
俺は止めを刺すために、タランの眉間に向かって飛び上がり、頭の上に着地すると一気に剣を振り下ろして、眉間を刺した。

タランの動きが止まり、死んだ事を確認すると、早速タランの解体に取り掛かる。
タランが吐いた毒の糸は、毒素を中和すれば頑丈なピアノ線の様な糸になる。
中和する為には特別な液体を振りかけるか魔法しかないのだが、俺達はそんな液体など持ってはいない。
どうしようかと迷っていると、シルバーが毒素を抜けるというじゃないか!
森に居る光の精霊の手を借りて毒抜きが出来るんだってさ。
流石森を司る妖魔だ。精霊と仲が良いみたいだし有難いね。

って言うか、よく見たら俺とシルバーの周りに精霊が沢山集まってきてないか?
シルバーって人気者だったんだな。

『何をバカな事を言ってるんだ?そいつ等はお前の匂いに釣られて来たんだぞ』

それさ。前にも言ってたよな。
一体どんな匂いなんだよ…。

俺は自分の腕や着ている服の匂いをクンクンと嗅いでみたが、そこまで良い匂いはしない。

『人間には分からないさ。例えるならケーキの様な甘い匂いと言ったところだな』

へ~。甘い匂いね。喰い付かれないなら別にいっか。
それより毒抜きを頼むよ。

『任せとけ』

シルバーが毒糸に噛みつくと、糸に触れた牙から金色に光る何かが流れる。
それはあっという間に毒糸全体に広がり、浄化された部分から次第にその光は消えて行った。
時間にして十秒ほどの出来事である。

おおー。すげぇー。と呆気にとられて観ていた俺だったが、事前に説明をされていたのでそれ程極端に驚いたという訳でもなかった。
しかし、何も説明を受けていなかったジョシュは違った。
シルバーが毒糸に噛み付いた為、咄嗟に止めようと動いたんだが、噛み付いた瞬間に毒糸が光りだした光景に驚いていた。

シルバーが出した金色の光は、中和魔法と言って高度な魔法らしい。
長い詠唱が必要となる為に、この術を使える人は少ないとか。
それを無詠唱一噛みで遣って退けたのだ。驚くなと言う方が難しい。

「す…凄いね…君のシルバーは…」

ジョシュのその言葉に素早く反応したのは何を隠そうシルバー本人だった。

耳がピクピク動いてるぞー。
尻尾も小さくだけど左右に振れてるぞ?
これは嬉しい時の反応だな。分かり易い奴め。
でも可愛いぞ。シルバー♪

毒が中和されてピアノ線のように頑丈な糸だけが残ると、俺達はそれを巻き上げ一つの塊にする。
それを無限袋の中に仕舞い、タランの牙や足の爪を収集し、タランの体を切り裂き体内から魔石を取り出した。

タランが持っていた魔石は闇の魔石で、それもかなり大きい魔石だった。
魔物が持つ魔石の大きさが魔力の大きさだとは聞いていたが、「こんなに大きな魔石は今まで見た事が無いぞ」、俺がそう呟くとジョシュは不思議そうな顔をして、「そうなのか?ここではこれが普通だよ」、と言ってのけた。
マジ半端ねぇ!魔大陸ってどんだけ危険なんだよ!
大丈夫か?俺。やって行けるのか?ここで。
そんな事を考えていた。

するとジョシュが楽しそうに話しかけてきた。

「ハルシオンって強いんだね。それにとても慣れてる風だったよ」
「えっと、しばらくの間冒険者の手伝いみたいな事をしてたからね」

「そうだったんだ。今はもう辞めたのかい?」
「辞めたわけじゃないよ。ちょっと訳ありでね」

「そっか…。言いたくないなら深くは聞かないよ」
「ありがとう」


道具になりそうな部位を取り出し、残りはその場に放置だ。
タランの肉は不味くて食えたもんじゃないとジョシュが言ってたし、放置しておけば他の魔物達が処理をしてくれるそうだ。
そうする事によって人里には近寄らない様にしていると言う。

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