ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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朝食を食べ終わると俺は、早速依頼の薬草採取に行く事にしようと思い席を立つと、ローズが何処に行くのかと尋ねて来た。
「何処に行くの。アタシも行くわ」
「これからやる事があるからローズは連れて行けないよ」
どんな魔物が出るか分からない魔大陸の森の中になんか連れて行けるはずがない。
ローズを守りながらの薬草採取って、どんな罰ゲームだよ。
魔力はそれなりにある方だとは思うけど、水弾とウォーターカッター位しか使えないだろ。
それなのに自分は強いと思い込んでて魔物に突進して行くんだよな。
それに何より、コイツはノーコンだ。
何処に飛んで行くか分かったもんじゃない。
魔物じゃなくて俺が殺されそうだよ・・・・考えただけでも溜息が出る。
ここは穏便に・・・。
「やる事って何?!何をする気なのよ。
アタシが付いて行ったらまずい事でもするの?!」
「いや、そうじゃなくて。
俺には俺の用事がある様に、ローズにはローズの用事があるだろ?」
「そうね。お店も色々見てみたいし、お土産も買おうかしら」
「だろ?だから別行動で良いじゃないか」
「アタシに一人で買い物に行けって言うの?!」
「俺が付いて行く必要性が無いだろ。
ここは町の中だから安全だし、それに、俺はローズの使用人で奴隷でもないん
だからな。
それに昨日自分でも言ってたよな。
町に着いたら別行動だって。」
「・・・言ったかもしれないけど、か弱い女の子を一人にするなんて信じられないわ!」
「か弱いって…。ローズは俺なんかより強いんだろ?」
「当たり前じゃない!出来損ないのアンタ何かと比べないでよ!」
「だったら一人でもいいじゃないか」
俺は溜息交じりに答える。
「じゃあ!誰が荷物を持つのよ!」
「・・・・・・自分で持てよ。」
「荷物なんて今まで一度も自分で持った事なんてないのよ!アタシは!」
「・・・・・アシデ島に行ったら一人なんだろ?自分で持つしかないよな?
今から慣れとかないとな」
ローズは何か腑に落ちなそうな顔をしていたが、少し理解をした部分もあるのだろう。
それ以上は何も言ってこなかった。
これで諦めてくれたんだと思った俺は、そのままローズを食堂に残し宿を出ると、依頼をこなすために町の外門まで歩く。
歩く道すがらパッド君で、薬草の生息地を調べ、それを見ながら先を急いだ。
異世界版ナビだね。
外門まで来ると、門の両脇に兵士が立っていて、その近くに見覚えのある姿がある。
昨日の少年、ジョシュだ。
ジョシュは俺の姿を見つけると両手を大きく振り、俺のほうに歩いて来た。
「やあ、また会ったね」
偶然か?それとも誰かと待ち合わせか?
「誰かを待ってるのか?」
「うん。ハルシオンを待ってたんだ」
「俺を?何か用か?」
「薬草採取に行くなら一緒に行こうかと思ってね。
・・・・・・ところで、後ろの人は彼女かい?」
後ろ?彼女?シルバーは俺の横に居るし、だいいちシルバーは雄のはず。
一体誰の事を言ってるんだ?
クルリと後ろを振り返ると、そこにはローズが居た。
「何で付いて来てるんだよ。付いて来るなって言っただろ?」
「何処に行こうがアタシの勝手でしょ!?って、誰よその人」
「ローズには関係の無い人だよ」
俺が面倒くさそうに言うと、ジョシュがローズに話しかける。
「君も冒険者かい?」
「違うわよ」
「なら、通行証を貰って来たのかい?」
「通行証って何よ」
ジョシュは嫌な顔をせず丁寧に教えた。
「僕達の様な冒険者は、ギルド発行の証明書があればどの国でも出入りは自由なんだ。
でも、君の様な一般市民は、町の管理棟で通行証を発行して貰わないと外門から先は
出られない様になってるんだ。
町には結界が張られてるから魔物は近寄れないけど、一歩外門の外へ出たら魔物に
襲われる危険性がある。
外へ出る時は護衛の冒険者を雇うか自己責任って事になるんだ。」
「魔物くらい平気よ!アタシは魔術が使えるんですもの」
「うん。でも君は冒険者じゃないんだろ?
だったら管理棟で通行証を発行してもらわなきゃダメだよ」
「アタシの国ではそんな事をしなくても外に出れたわ!」
「君も人大陸から来たみたいだけど、ここは魔大陸なんだ。
魔大陸には魔大陸のルールがある。分かるよね?」
「それくらい分かるわよ!」
「だったら通行証を貰って来なきゃ外には出れないって理解したかな?」
「・・・・・・分かったわよ。貰ってくれば問題ないんでしょ!
行くわよ!ハルシオン!」
当然の様に俺の名前を呼び、顎をクイッと突き出す。
「・・・・・俺は行かないよ」
「何でよ!あんたも通行証が無いと出れないのよ?!
今の話し聞いてなかったの?!理解できないの?!バカなの?!!」
「俺、持ってるし。証明書」
そう言って冒険者用証明書を出して見せる。
ローズは驚いた顔をして、「いつの間に!」とか「何処で手に入れたの!」とか言っていたが、俺はローズの雇用人でもなければ奴隷でもない。
プライベートを話す義務もなけりゃ義理も無い。
少し可哀想だとは思ったが、ローズをその場に残し俺は薬草採取をする為に、町の外門をくぐり外に出た。
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