ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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第二十五話
■ 薬草採取は簡単なお仕事です? ■
んん~~~~~。良く寝た。
大きな伸びをしベッドから起き上がると、既に日が昇っていた。
『おお。生きてたか』
「何でだよ!起きていきなりその発言ってどうよ?」
『だってシオン、昨日部屋に入っていきなりベッドに倒れたと思ったら
そのまま動かなくなったんだぞ?だから俺が布団をかけてやったのに
覚えてないのかよ』
「ごめん・・・・記憶にない。
でも、ありがとな。・・・・・・・てか・・・シルバー大きくなってないか?」
『あ?そう言えば少し体が軽くなった様な気もするな』
「なんか二回り位デカくなってるぞ…」
今のシルバーはドーベルマン程の大きさになっている。
犬ってこんなに成長早かったっけ?
いや、狼だから早いのか?
こりゃ餌も大物を獲らなきゃダメかもしれんね。
身支度を整え、今日から冒険者初日と言う事で、何となく気分も引き締まる。
冒険者の真似事と言うか、実際には冒険者だったのだが、今まではベテランのロジャー率いる《イカヅチ》のメンバーと供に行動していた。
何に注意を払い、いかに効率よく行動をするかは、この二年半の間に実戦で学んでいる。
今日から請け負う依頼は初歩の初歩なので、何も心配する事はないだろう。
今までも一人でふらっと薬草を摘みに森の中に入った事もある。
迷宮で魔物と対峙した事もあるし護衛の経験だってあるのだ。
普通は不安になるかもしれない。でもシオンは違う。
一人でどこまで出来るのか試してみたいという気持ちの方が大きかった。
一階にある食堂に行くために、ドアを開けて廊下に出ると、そこには不機嫌な顔をしたローズが仁王立ちの姿で立っている。
「遅いわよ!いつまで寝てるのよ!」
俺コイツと飯食う約束なんかしたか?
『俺が知ってる限りではしてないな』
そうだよな。なんでローズはこんなに怒ってんだ?
「俺、朝飯一緒に食べるようなんて言ったっけ?」
「い、言ってないわよ」
「じゃあ何で怒ってるんだよ」
「怒ってなんかないわよ!」
ほら怒ってるじゃないか。
何だかな…。
前世でも相手の考えを汲み取ってやらないと怒る奴がいたけど、そいつらと同じタイプだな。
自分は悪くない。気を使わないお前が悪い。みたいなさ。
無理!無理無理無理!絶対に無理!! メンドクセ。
「怒ってる位なら先に食いに行けばよかったじゃん。
そこまでして俺を待ってて何の得があるんだよ」
「はぁ?!アタシはね!アンタみたいな出来損ないが一人で食堂に行っても
食べさせて貰えないと思ったから待っててあげたのよ!」
待っててあげたのよって、すんげぇ恩着せがましいんですけど。
「いやいやいや。ここの宿だって俺一人でも取れただろ。
その時にちゃんと説明も受けたぞ。お前何見てたんだよ」
「あれは!アタシが傍に居たからでしょ!アンタがアタシの奴隷だと思ったから
親切にしてくれただけよ」
こりゃまた思いっきり斜め上を走り出したねぇ~。
昨日町の中を少し歩いて分かったんだが、魔大陸では実力がものを言うようで、魔力・腕力・武術、どれか一つでも出来れば苛まれる事はない。
現にこの俺が、商店でも露天でも、店の人に嫌な視線で見られなかったし、対応も丁寧だった。それがこの大陸の現実だ。
まだ何かブツブツ言ってるが、気にしたら負けだ。
ローズもローズなりに不安なんだろう。
仕方がないので一緒に食堂まで行き朝食を食べたが、朝からどんだけ食うんだよコイツは。
スープと一緒に付いて来たパン二個をあっという間にたいらげ、おかわりを二回して合計六個のパンを食べた。
いくら小さいパンとはいえ、何処にそんなに入るんだか。
見てるだけで腹が一杯になってきたよ。
シルバーだって目を丸くして見てるぞ。
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