ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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うん。これはかなり目立つな。
ピンク色の外壁にミニチュアなお城版だ。
入り口の上にでかでかと「サフレ ギルド支部」と書いてなきゃラブホかと思うぞ…。
これを作った奴の趣味を疑うね。
俺は呆気にとられながらギルドの前で立ち止まり、気を取り直して扉を開けて中に入った。
ギルドの中はその外装とは裏腹に、厳つい男達で溢れかえっている。
人族が五割、獣族が四割で魔族が一割という感じに見える。
魔族は人族と殆ど変わりはないが、大きな特徴として瞳が赤い。
当然魔族と呼ばれるのだから、その魔力も人族より大きい。
なら魔族の方が幅を利かせてるんじゃないかと思われがちだが、魔族は筋肉が発達しない為に、剣術や武術が全くと言っていいほどできない。
遠距離からの攻撃には向いてても、近距離からの攻撃や闇討ちには対処できにくいのだ。
獣族は、人族より遥かに体が丈夫で、種族によっては俊敏さもかなり高いものとなっている。
腕力に長けている獣族は、その分魔力が低いのが特徴だ。
したがって、別種族同士で協力し合うというチーム編成がこの魔大陸では一般的だそうだ。
受付カウンターが四か所あるが何処で登録すればいいんだ?
入り口の直ぐ側に立ちキョロキョロと見回してると、中に居た冒険者の男達が俺の方を見ている。
やっぱり十五歳にならないと冒険者にはなれないのか?
何しに来たんだこの出来損ないが。と言う様な視線が痛いな。
取り敢えず聞くだけ聞いてみよう。
一番人の少なそうなあそこのカウンターがいいな。
俺は一番並んでる人の少ないカウンターに歩いていった。
「いらっしゃい。なんの用事?」
笑顔一つ見せず機械的に聞いてくる。
「冒険者登録をしたいんですけど」
「登録は満十三歳からです」
おお。十三歳なら丁度出来るじゃないか。
「十三歳です」
「あら、そうなの?ならこれに手をかざしてちょうだい」
そう言って受付嬢はテーブルの下から水晶の様な物を取り出した。
俺は言われた通りに水晶に手をかざすと、水晶が光りやがて光は消えた。
「もう良いわよ」
水晶から手を離すと、俺が今まで手をかざしていた場所にカードが現れる。
それを受付嬢が手に取り、カウンターの上に置く。
「このカードの上に手を乗せてちょうだい。
幾つか質問するから答えて」
「はい」
言われた通りに手を乗せ、俺は質問に答える。
「名前は?」
「ハルシオンです」
「歳は?」
「十三歳」
「出身国は?」
「ゴルティア国」
「受付完了よ。おめでとう」
「ありがとうございます」
「では軽く説明しますね。
まず初めはFランクからとなります。
既定の依頼を幾つかこなすとランク昇格となり、Cランクまでならソロでも可能です。
Cランク以上になるとソロではきついでしょから、パーティーを組んだ方が無難です。
後は、冒険者専用の宿がこの建物の三階と四階にあるので、ご利用ください。
料金は一泊二食付きで大銅貨三枚。素泊まりなら大銅貨一枚になります」
こりゃ、めっちゃ安いな。
素泊まりで千円位なら明後日からここに泊まるか。
あそこの宿屋はもう金払ってしまったしな。
飯ならそこら辺にある食堂でもいいし、ギルド内にも食堂兼酒場があるんだから問題は無いだろう。
さて、ここはどんな依頼があるんだ?ちょっと覗いてみるか。
俺は依頼が貼り付けられている壁の前に移動した。
ふむふむ。Fランクは、っと。
ランク別にボードが壁に組み込まれていて分かり易いな。
Cランクの前が一番人が多いか。次にDランクね。
BとAはあんまり人が居ないのな。
ああ、護衛とか討伐が主なのか。納得。
Fランク・・・・って!全くと言っていいほど人が居ねぇ!!
そりゃそうか。初心者ランクだもんな。うんうん。
それにしてもあんまり無いな。
殆どが薬草採取か荷物運びとかの手伝いか。
荷物運びは一時間銅貨五枚。五百円ってとこだな。
薬草採取は、赤の薬草(体力10%回復)が銅貨一枚で緑の薬草(魔力10%回復)が銅貨二枚か。
金バリ草(体力30%回復)が銅貨五枚ね。
おっ、ツルギ草(魔力30%回復)が大銅貨一枚だと!?
これにしよ。
10株も採れば銀貨一枚だぜ。
薬草は常時募集と書いてあるから、今日はもう日が暮れそうだし明日にでも行ってみるか。
取り敢えず今出来る事はしておいたし、今日はゆっくり体を休めるとしよう。
そう思っていたら後ろから声を掛けられた。
「お前ここら辺じゃ見ない顔だな。何処から来たんだ」
声を掛けて来たのは赤い瞳をした魔族の少年だった。
歳は俺とさほど変わらなそうだが少し年上っぽいな。
その魔族が俺に何のようだ?
「人大陸から来た」
「人大陸からだって!?一人で来たのか?!」
「一人じゃないけど、色々と訳があってね」
「じゃあ仲間がいるのか」
「仲間じゃないな。成り行きと言うか、しょうがなくと言うか…」
「ハッキリしないやつだな」
「色々と事情って言うもんがあるんだよ」
「そっか、なら深くは聞かないよ」
おっ?コイツ良い奴かもしれん。
「用が無いなら帰るね」
「あっ、ああ。僕はジョシュって言うんだ。君はなんて言うんだ?」
「俺はハルシオン。じゃあね」
それだけ言うと俺はギルドを後にした。
あのジョシュって奴は何で俺になんか声を掛けて来たんだろ。
子供が俺しか居なかったからか?
深く考えるのも面倒だし、もう会う事もないだろう。
この五日間、ボート漕ぎで疲れたし。
起きてる間ずっと魔力を使って、つむじ風をしてたんだ。
ローズは交代してくれないし。
いや、一回だけ代わってくれたな。一分程な!
直ぐ疲れたと言って放り投げたけどね!!
ハァ~・・・・思い出すと腹が立つな。
アイツの事を考えるのは止めよう。精神的に良くないわ。
俺は足早に宿へ戻り、晩飯を食べて直ぐに寝た。
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