ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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ドアを開けると、部屋の広さは六畳間くらいだ。
両脇が客室なので窓は正面に一つだけある。
窓の下にシングルのベッド。
左側のドア付近にテーブルと椅子が一脚。
右の壁には荷物が置けるスペースが有る造り棚があり、棚の下には大きな荷物でも置けるようにしているのか、何もない空間だ。
シオンの荷物はというと、腰に装着している無限異空間袋と剣。
それと、獲物の解体や料理などに使うと便利な短剣くらいしか無い。
他の冒険者や旅行者に比べるとかなり身軽だ。
部屋に入ると俺はそのままベッドに腰を掛け、乗っていた船が沈没した後の事を考える。
クリフに言われた通りにザイル星を目指してボートを進めて来たが、流れ着いたのは魔大陸だ。
クリフが嘘を言わない限りこんな事にはなるはずがない。
嘘?まさかな。
クリフは冗談好きではあったが、嘘は言わない男だ。
・・・・・・待てよ。
クリフが冗談で言った事を俺が真に受けたとしたら?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
大きな溜息をついた。
こんな時に闇の精霊王のベルが居てくれれば何の問題も無いのにな。
精霊というのは自分の生まれた大陸を離れられないらしく、付いて行く事ができないと言った。
ここはダメ元でパッド君でも見て見るか。
意外な事に俺の地図スキルが力を発揮したようだ。
今まで俺が見ていた地図は人大陸のみしか映し出されていなかった。
人大陸の周りは全て海で囲まれてたはずだったのに、今は魔大陸の姿が映し出されている。
その大きさは人大陸に匹敵するほど大きい。
そしてチョコンと豆の様に書かれているアシデ島もあった。
おぃおぃおぃ・・・・方向全然違うじゃないかよ。
アシデ島の位置は左下に大きくずれて浮かんでいた。
クリフめ。嘘を教えやがったな…。
クリフは嘘を言ったわけではない。
一人離れる事に落ち込んでいるシオンに対し、冗談で言っただけだった。
まさか乗ってる船が沈没するとは思ってもいなかったんだろう。
沈没さえに無ければ遭難する事も無い。
そのまま船でアシデ島について終わりだ。
軽い気持ちで吐いた冗談のせいで、シオンがこんな事になっているとは想像もしていないだろう。
ガックリと肩を落とし溜息をつくシオンだったが、気を取り直し魔大陸について調べてみる。
《魔大陸》
元々は魔物が住んでいた大陸。
魔物の中には進化をする種族がおり、極稀に進化をする事が確認されている。
体の一部が人間のようになると、知能も人間に近付き言葉も理解できるようになる。
単体で最終進化の妖魔まで行く者もいれば、進化した魔物同士の配合で更に進化できる子供が生まれる。
一般的に、普通の進化を成し遂げた場合、最終進化は《獣人》になる。
この場合、普通の人間と見た目があまり変わらなくなり、知能も人間並みか少し劣る程度だ。
ただし。体の一部に元である獣の証が残る。
魔大陸は人大陸と違い、多くの魔素で出来ている。
魔素とは魔力に必要不可欠な物とされ、これを多く取り込む事によって魔物は力を発揮する。
人間は魔素をそれ程取り込まなくとも、体内で魔素を作る事が可能なので必要はない。
この魔素のおかげで、枯渇した魔力が幾分早く回復できる程度だ。
したがって、魔大陸に住む魔物は、人大陸の魔物よりかなり強い。
人大陸の魔物よりワンランク上の力だと思えばいいだろう。
マジか・・・・。
って事は、最弱なゴブリンがオーク位の強さがあるって事だよな。
面白そうな大陸だな。
あっ、まだ何か書いてあるぞ。
何々。魔大陸は力を求める者の修練場所には最適だと?
ただし、その道のりは過酷で命の保証はしない・・・・って、何だよこれ!
自己責任でやれって事かよ。
でも考えてみりゃ、数カ月は迎えに来ないんだよな。
その間にここで修業をするのも悪くないよな。
魔大陸で俺が噂になったとしても、人大陸まではいかないだろうし。
これはチャンスかもしれない。
半年位修業して、その後でアシデ島に向かおう。
あ~・・・・、そうなるとギルドとかに入って冒険者にならないといけないのか。
俺この間十三歳になったばかりなんだよな…。
ダメ元でギルドにでも行ってみるかな。
そう思った俺は、早速着替えてから下に下りて行き、カウンターに居たおっさんにギルドの場所を聞く。
ギルドは目の前の大通りを左に真っ直ぐに行った場所に在り、かなり目立つ建物だから迷わないだろうと言われた。
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