ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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一頻(ひとしき)り鍛冶屋の仕事を堪能すると、俺は古道具屋の前で立ち止まった。
店先にある台の上にはセールの文字。
少し錆びてる物も多々あるが、磨けばまだまだ使えそうな逸品がある。
セール用品程度なら俺の小遣いでも買えそうなので、何か掘り出し物が無いか眺めていた。
すると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「古道具屋って…。なんだか貧乏臭い響きよね」
声の方へ振り返ると、そこにはローズが立っていた。
振り返った俺の顔を確認したローズは。
「出来損ないの子供にはお似合いかもね」
鼻で笑うようにそう言った。
「そうですね。でもたまに掘り出し物とかがあるんですよ?
そういうのを見つけた時にはワクワクしますよ」
「ふん。こんなガラクタばかりの所に掘り出し物なんて在るわけないじゃない」
そう言いながら、ローズは古びたウエストポーチを、親指と人差し指で挟みながらブラブラとさせて持ち上げる。
「お嬢様にはガラクタにしか見えないでしょうが、僕が買えるものと言ったら、
今はこのくらいの物しかないのです」
少し悲しそうな表情で言った。
流石のローズも言い過ぎたかと、ハッとした様な顔をしたが、そこは生まれながらのお嬢様だ。直ぐに気を取り直し、踵を返してその場を去っていった。
俺はローズが抓んだウエストポーチを手に取る。
確かに指先で抓みたくなるほど汚いな。
素材は…麻?かな?
それにしては色がくすんでるな。
日に焼けたのか汚れてるのか分からない程汚いし、この所々にある赤茶色の斑点は模様なのか?
・・・・・違うな。これは血の色が変色した後だな。
ん~・・・・。一応鑑定はしておこうか。
こう言うのが掘り出し物って可能性もあるしな。
鑑定スキルを使うと、いつもお馴染みのパッド君が登場する。
パッド君に鑑定したい物の判定結果が表示された。
―――――――――――
名:無限異空間袋
特殊効果:時止
《取り扱い説明》
* 許容量無限
* 大小に関わらず収納可能
* 取り出し時はイメージをすれば取り出し可能
* 入れた時の状態をキープ
《備考》
無限異空間袋の中身:薬草×5 オリハルコン 金 銀×3 銅×4 鉄×10
ワイバーンの牙 ブルフの爪
―――――――――――
・・・・・・おいおいおい。無限異空間袋だと?マジかよ・・・・。
こんなのアニメの中だけだと思ってたぞ…。流石異世界だな。
って事は・・・・これってめっちゃ掘り出し物じゃね?
異空間袋自体はたまに見かけるが、容量制限があるもんな。
ロジャー達が持ってるやつだって、精々20個程しか中に入らないし。
そのくせメチャメチャ高いらしいけどな。
でもこれ・・・・、無限だぜ!?無限!
おまけに時止!
希少品じゃね?
それがこの値段かよ・・・・。
ここの店主見る目が無いな・・・・。俺は嬉しいけど。
ウエストポーチを手に持ち、店内に行き、店主に声を掛ける。
「これ下さい」
「あ~、大銅貨1枚だな」
ポケットから大銅貨を一枚出し、それを店主に渡す。
これが大銅貨一枚とかありえないよな。
大銅貨一枚って言ったら千円だぜ?!千円!
やべぇ。顔がニヤケル。
「ボーズ、本当にそれでいいのか?」
「うん!こう言うの僕欲しかったんだ!」
「俺も売っといてなんだけどよ。よくそんな汚いの買う気になったな」
「エヘヘヘ」
笑って誤魔化した。
おっちゃんこそ、よくこんな希少価値の物を大銅貨一枚で売ろうと思ったよな。
それも中身付きで。
俺はこのポーチの事がバレないうちに逃げるように古道具屋を後にした。
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