転生乱舞 ~ 目が覚めたら其処は 異世界だった

転生乱舞 ~ 目が覚めたら其処は 異世界だった

ムーン  2016-02-18 17:52:07 
通報
親に引いて貰ったレールの上を、何不自由なく生きてきた28年。
旧帝大を卒業し、一流企業に入社。

出世も仕事も順調で、後は嫁さんを貰って勝ち組イエーイ♪
の、はずだった。

仕事で三カ月の海外出張が決まり、その仕事もそつなくこなす。
そして帰りの飛行機の中で…、事件は起きた。


初めはハイジャックかと思ったが、テロだった。
それも自爆テロ。

犯人の動機も目的も、何もわからないうちに飛行機は爆破された。

そして、俺が目を覚まし、気が付いた時には、そこは異世界だったのだ。

コメントを投稿する

  • No.27 by ムーン  2016-03-18 21:46:26 

第十二話
■ クウが流行病にかかった ■



― ハァハァハァ

脱兎の如く逃げて来た俺は、宿屋に帰って来た。
危なかったな。
あそこにいつまでも居たら完璧に厄介事に巻き込まれてたぜ。
この世界で俺みたいな奴が、癒し系ヒールを使える訳が無いもんな。
それでなくても癒し系の術は貴重だって言うし。
使える奴も極少数だそうだ。
そう考えるとファインって凄い奴だったんだな。

初めての1人部屋を堪能しながら俺は、ベッドに大きくダイブした。
ゴロンと身体を仰向けにし、部屋を出て行く前に少し開けた窓から涼しい風が入ってくる。
走って火照った体に心地良い。

サワサワと風に揺れて擦れる木々の葉音。
大樹に羽を休めに来ている小鳥のさえずり。
のどかだ。

そんなのどかで静寂した世界を壊す声が、廊下の方から聞こえて来た。

「おいクウ。本当に大丈夫か?」
「大丈夫っすよ…」

「大丈夫じゃないだろ。足元ふらついてるぞ」
「気のせいっすよ…」

「いいから寝ろ。
 後でファインに診て貰え」
「へーい…」

ドアを挟んでそんな会話が聞こえて来た。
まさかクウが流行病にやられたとか?
まさかな。

瞼を閉じていたせいか、俺は段々と睡魔に侵され、いつの間にか寝てしまっていたようだ。



目が覚めたのは日が沈んだころ。
腹から大きな音が鳴り、何の音かと驚いたが、単なる腹の虫だった。
最近自分の食欲の大きさに驚くばかりだ。

俺は大きな伸びを一つすると、いつもなら誰かしらが「シオン!飯に行くぞ!」と声を掛けに来るのに、今日は誰も呼びに来ない事を不思議に思った。
いつまでも寝てるから置いてかれたか?


食堂の方に下りて行って辺りを見たが、ロジャー達の姿はない。
まだ飲みに行くには時間が早いし。
久し振りにゆっくりできて皆も寝てるのか?
ちょっと様子でも見に行ってくるかな。

ロジャーの部屋のドアを小さくノックして少しだけ開けて中を見て見る。
もし寝てたらノックの音で起こすのも忍びないからな。

― カチャリ

シーンとした室内には人の気配が無い。

そう言えばクウが具合悪そうだったな。
クウの所でも行ってるか?
俺はそのままクウの部屋に向かった。

― コンコン カチャリ

居た。
ロジャーだけではなくファインも居る。
中に入ろうとしたらロジャーに止められた。

「シオン!来るな!」
「えっ?」

俺は入り口付近から二人の様子を見る。
ファインがクウの額に手をかざし、小さく首を左右に振る。
クウはベッドの中でガタガタと小刻みに震えていた。
多分高熱でも出してるのだろう。

治癒魔法のヒールは、地球で言えば外科手術の様な物だ。
内蔵や皮膚の縫合がそれに当たると考えてくれればいい。
したがって内科的治療には向いていないという訳だ。
ヒールの一段階上に当たるヒーラがそれに近いかもしれない。
毒や麻痺の治療ができるのだから。
でもそれだけだな。

ヒーラは使用者の知識量に比例するらしい。
その病気の原因と経路を理解していないと治す事が難しい。
この世界は、ヒールやヒーラに頼り過ぎていたために、医学がかなり遅れている。
最近になってようやく薬師という存在が現れたぐらいだからな。


ファインがクウの額に手をかざし熱を計っている。
その様子をロジャーが静かに見守っていた。

「熱…かなりあるんですか?」

ここからじゃ見えないな。
もう少し近寄ってみるか。

ジリジリと近寄っていると、クウの様子を見に来たクリフに背中を押された。

「シオン。そんなとこに立ってたら邪魔だろ。とっとと中に入れ」

いきなり背後から押された俺は、よろけながらロジャーにぶつかる。

「チッ。うつるかも知れないから来るなと言ったろ」

ロジャーに怒られたが俺のせいじゃないと思う。
文句なら俺を突き飛ばしたクリフに言ってくれ。

「ごめんなさい…」

一応子供らしく謝っとくか。



ふと、クウの顔を見たら、耳の後ろ辺りに赤い小さな斑点が見えた。
熱のせいか息遣いが荒い。

あれ?これって、昔俺と弟がかかったやつに症状が似てるな。
弟も耳の後ろにプチッと赤い斑点が出て、腹とか尻にも出たよな。
あれは確か麻疹だったはずだ。
まさかとは思うが一応見て見るか。

「シオン。何をやってる」
「えっと、赤い斑点が出てるかな~って思って…」

「赤い斑点だと?」
「はい。ここ。」

そう言って俺は耳の後ろを指さした。

クウの額を触るとかなり熱い。
体感温度で40度はぶっちぎってるだろう。
確か人間って42度を超えたら死ぬんだっけ?
こんな熱が何日も続いたら脳細胞がやられるのも納得だわ。

俺はクウの腕や足を見たが、赤い斑点らしきものは見当たらない。
軽く服をめくり腹を見ると、二・三個の赤い斑点がある。
ついでだから尻も見て見る事にする。
クウのズボンに手をかけてずらそうとしたら、ロジャーに止められた。

「何する気だ?」
「確認するだけですよ?」

「何をだ」
「斑点があるかどうかです」

「・・・あった」

小さな赤い斑点が数個。
これは間違いないな。

「斑点があったらどうだって言うんだ」

ロジャーは意味が分からず問いかけてきた。

「僕、この病気知ってます。
 孤児院に居た頃に、仲間がこの病気になりました」

嘘じゃないぞ?
二年前に孤児院でこの病気が流行った事があるんんだ。
最初は館の子供だ1人かかったんだけど、感染力が凄くてな。
あっという間に半数が麻疹になった。
そのうちの三分の二が亡くなったけどな。

ジェシカ達は流行病が怖かったのか、病気の子供の面倒なんてみやしなかった。
ジェシカだけじゃない。
あそこにいた大人は皆知らん顔だ。
病気の子供の世話をするのは俺達ボロ小屋の子供。
何の価値もない、出来損ないのガキと言う認識だったからな。

当時俺は、麻疹と言う事は分かってたが、治療薬が無いこの世界じゃどうする事も出来なかった。
熱を下げようにも薬さえない。
ただ診てる事しか出来なかったんだ。

そのうちボロ小屋の子供にも、その症状が出た。
そうなったらうつるのが怖いのか、食事さえも与えられなくなったんだ。
俺達が使った物からうつるって言ってさ。

その子供は、高熱が数日続くと、次第に体力が低下してきたのか生気のない顔になっていった。
現代医学なら抗生剤や点滴などで、一週間や二週間食べなくても死にはしないが、
この世界での一週間は死を意味する。
特に体力の無い子供や老人がだ。

俺は段々と衰弱していく子供をみて、こんな理不尽な事があってもいいのか、と怒りを覚えた。
そして子供の額に手をかざし、

「クッソ…抗生剤さえあればウイルスを殺せるのに…」

と、呟いたら、あら不思議!
掌が温かくなってみるみるうちに子供の顔に生気が戻って来たんだ。

驚いたね。
初めは意味が分からなかったが、病気の元を特定すれば、それに合ったヒーラが流れる仕組みらしかった。

その後、その子は順調に回復して、売られて行ったけどな…。


そんな経緯から俺には自信があった。
クウの病気を治す自信が。



「僕が治してもいいですか?」
「な、なにを言ってる!
 この私でさえ治せないのにお前に治せるわけが無いだろ!」

貴重な治癒魔法を使えるファインが治せない病気を、髪の色の薄い、出来損ないの子供が出来るわけが無いと言い放った。
きっとファインのプライドもあったんだろう。

「お前でも治せないんだ。
 試しにやらせてみたらどうだ。
 治せないなら治せないで問題がないだろう」

ファインはムスッとしていたが、ロジャーの許可も出たので、俺はクウの額に手をかざし呟いた。
勿論心の中でだがな。

『抗生剤投与、解熱剤投与、体力回復、ヒーリング』

コツはな。元の世界の薬品を想像しながら魔術を込める事だ。
多分、俺にしか出来ない裏技だな。
種は教えないけどね。
てか、教えても理解できないし想像もできないだろう。
見た事が無い代物なんだからな。




次の日から、それ程高熱も出ず、クウは順調に回復して行った。
だが、問題が一つだけ残ってしまった。
どうして俺みたいな奴がそんなに高度な魔術を使えるのかって問題がね。

その出来事の一部始終をマジかで見ていたロジャー、ファイン、クリフ。
問い詰められたが『知らぬ存ぜぬ』で押し通したよ。
あまり高度な魔術は使うもんじゃないな。
怪しまれる。
お前はいったい何者なんだってね。

俺が思うにさ、結局は髪の色の濃さと魔力なんて関係ないんじゃないかって思うんだ。
たまたま魔力量が多い奴の髪の色が濃かったってだけでさ。
クリフやリカルドだってそれほど魔力量は多くないぞ?
髪の色は普通なのにだ。
この矛盾点にみんなはいつ気が付くのやら…。



クウの流行病騒動から一週間。
順調に回復したクウは、今はもう元気になっている。
俺は面倒事がこりごりなので、以前にもまして大人しくなりを潜める事にした。
生死に関わる事以外は、何も知らない子供の振りをすると心に誓った。

[PR]リアルタイムでチャットするなら老舗で安心チャットのチャベリ!
ニックネーム: 又は匿名を選択:

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字 下げ
利用規約 掲示板マナー
※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※必ず利用規約を熟読し、同意した上でご投稿ください
※顔文字など、全角の漢字・ひらがな・カタカナ含まない文章は投稿できません。
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください

[お勧め]初心者さん向けトピック  [ヒント]友達の作り方  [募集]セイチャットを広めよう

他のトピックを探す:その他のテーマ







トピック検索


【 トピックの作成はこちらから 】

カテゴリ


トピック名


ニックネーム

(ニックネームはリストから選択もできます: )

トピック本文

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字

※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください
利用規約   掲示板マナー





管理人室


キーワードでトピックを探す
初心者 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 部活 / 音楽 / 恋愛 / 小説 / しりとり / 旧セイチャット・旧セイクラブ

「これらのキーワードで検索した結果に、自分が新しく作ったトピックを表示したい」というご要望がありましたら、管理人まで、自分のトピック名と表示させたいキーワード名をご連絡ください。

最近見たトピック