ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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さてと。
今回の目標である地下20階層のボスに会う前に、一旦休憩をとる事になった。
1階層から20階層までノンストップで降りて来たんだぜ?
そりゃあ疲れるだろ。
ん?なんで20階層から始めなかったのかって?
お前らなぁ~・・・・。
俺を殺す気か?!
俺はな。
自慢じゃないがど素人だ!
迷宮を見たのも初めてだし、入るのも勿論初めてなんだよ!
どんな敵がいるのかも分からんのに、いきなり20階層に突っ込まれても足を引っ張るだけだろうが。
逆に聞くけどさ。
お前らプールで泳げるようになったからって、いきなり太平洋の沖合に放り込まれてみろよ。
そこから岸まで10㌔だから泳いで帰って来いって言われたらどうするよ?
いくら先輩と一緒だからって言ってもさ、無理だべ?
そう言う事だ。
まっ、丁度腹もすいてた事だし、美味しくいただきましたとも。
鳥の丸焼きをね。
味付けは塩のみ。
食材は自分で拾ってくる。
食べる分だけね。
なんたって絨毯の様に転がってるからね♪
これが本当の自給自足…慣れたくないわぁ~…。
火を起こしたり水を出したりしたのが、意外な事に俺だった。
他の人は出来ないんだってさ。
火を起こす事は出来てもさ、水をチョロチョロと手から出す事ができないって言うのにはビックリだ。
どうやっても水弾になるみたいだな。
そこら辺水浸しになったぜ。
「そろそろ行くか」
「おー」
「そうっすね」
「どっこいしょっ」
「ファインさんジジ臭いっすよ」
みんな元気だな。
とりあえず俺も行くとするか。
それから数十分歩くと、門番がいるという部屋についた。
「このドアの向こうがそうだ」
「はい」
俺は生唾を飲み込んだ。
― ギギギギーッ
ドアを開けると、奴はそこにいた。
黒いマントを頭からすっぽり被り、体は少し宙に浮いている。
顔は良く見えないが、色的には黒い。
そして目だけが赤く光って見える。
不気味だ。
「アイツが門番の『吸血ジャミラ』だ。準備は良いか?行くぞ!」
ファインが詠唱をして全員にバイキルトをかける。
かけ終わるとすかさず、今度は防御力、俊敏力の魔術をかけた。
リカルドとクリフは特攻して行き、ジャミラに切り掛かる。
クウとロジャーは剣を魔術で覆い、クウは遠くから剣を振るう。
クウの剣先からは水の刃が一振り事に飛び出し、門番を切り付けた。
ロジャーの剣は炎の剣へと変身して、ジャミラを一刀両断にした。
それらの出来事を俺は唖然として見ていたんだが、こんなに強いのに何故前回は負けたのかと不思議に思っていた。
と、その時だった。
切られたはずの部位がユラユラと煙の様に宙を漂ったかと思うと、ピタッと元の場所に戻りよった!
なんじゃこりゃああああああ!!
これはあかんわ…。
切る意味ねぇし…。
どうしたもんかな…。
俺は元の世界の記憶をフル動員したよ!
思い出せ。思い出せ。
さっき居たのは吸血コウモリ。
吸血コウモリの親玉と言えば…、アイツだ!
吸血鬼。
吸血鬼と言えば太陽の光に弱い!
これだ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・。
ここ洞窟の中やん…。
アカン…。
あっ…!
吸血鬼ってアンデットに分類されるんじゃなかったっけ?
・・・・・って事は。
ヒール!
たぶん答えはこれで合ってるはずだ。
試してみる価値はあるな。
「ファインさん!門番にヒールをしてあげてください!」
「何トチ狂ってんだよシオン!敵をわざわざ回復してやるバカが何処にいるってんだよ!」
クウが物凄い剣幕で怒りながら怒鳴った。
「このまま普通に戦っても勝ち目なんてありませんよ?
一度試してみてください。ファインさん!」
「どうなっても知らないからな!」
そう言ってファインさんは門番にヒールをした。
あっ…、やっぱりね。
かなり苦しがってるな。
おし!この勝負貰ったわ!
「僕も手伝います、ファインさん!」
俺とファインさんは門番の吸血鬼ジャミラに向かってヒールをぶっ放した。
そりゃあもう、休む暇もなくね。
― ギャアアアアアアアアッッ
「ハァハァハァ…
やったな…シオン…」
「はい!・・・・ハァハァ…」
肩で息をしながら俺達は顔を見合い、そして小さく頷いた。
門番が守っていた宝箱を開けてみると、ロングソードが入ってた。
「こりゃ凄ぇ…」
「これが吸鬼の剣(ジャミラ ノ ツルギ)か・・・」
「こんなの初めて見たっす…」
「ヤバイな…」
どうやら、吸鬼の剣はレア品らしい。
この宝箱というやつは、運で決まる。
今回はレア品だったが、ほとんどの場合が『お金』か、そこらの店でも手に入る『武器』なんだと。
魔力をすっからかんにして頑張ったかいがあるってもんだぜ。
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