ムーン 2016-02-18 17:52:07 |
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第八話
■ 剣と魔術 ■
次の日、俺達は予定通りに宿屋を出発した。
ロジャーに買われてから一週間。
自分で自分の身を守れと、みっちり特訓された。
素振り・打ち込み計300回・走り込み30km。
この地獄のような特訓に耐えて、とうとう迷宮に挑戦だ。
なんて言えればカッコいいんだけどね。
本当はただの荷物持ちさ。チッ
=====
町から迷宮までは歩いて二時間。
車だと十五分程度かな。
各自リュックに、食料等最低限の荷物を背負い、迷宮へと繋がる道を歩いていた。
先頭にリカルドとクリフ、真ん中がロジャー。
クウと俺が最後尾だ。
町を出た辺りは見渡しの良い草原でも、一時間も歩くとうっそうとした森林地帯になる。
森の中は魔物が出やすいので、剣士の二人が先陣を切るのだ。
幸か不幸か今のところ魔物の姿は見えない。
最初はクウも俺に話しかけてきてたのだが、今はロジャーと話しをしている。
そうそう、孤児院に居た時には馴染みのなかった言葉がある。
『魔剣士』だ。
『魔剣士』とは一体何なのかとクウに聞いてみたところ、
「ああ~、同じ剣士でもな、魔力の量が少ない奴が『剣士』で、多い奴が『魔剣士』
って言うんだ」
「魔力が多いなら魔術師じゃないんですか?」
「えっとな、『魔術師』になるにはMP量が最低でも5000は必要になる。
それでも少ない方だ。」
「少ないんですか?」
「当たり前だろ!?
索敵したり結界を張ったり、光と闇属性なら補助系呪文を酷使するしな。
炎と水は主に攻撃系だし、高度な呪文を使うとなれば、5000ぽっちじゃ
半日で魔力なんて空っぽよ」
俺は興味津々で食いつくように話しを聞き入っている。
そして尚もクウは話しを続ける。
「要はよ、MP1000未満の奴が『剣士』で、MP1000~2500の奴が『魔剣士』
って呼ばれてるんだ」
あれ?ちょっと待てよ。
髪の色の濃さと魔力って関係ないんじゃないのか?
リカルドは緑の髪でクリフは真っ赤な髪…、なのに魔力量が1000も無いって…。
なんかおかしくね?
「でも魔力は強いんですよね?」
「ああ、魔力量こそは少ないけど、上級魔法を使えるぜ」
「上級って事は、初級とか中級とかもあるんですか?」
「ある。
言っちゃ悪いけどよ、シオン。お前の髪の色だと初級が限界だろうよ。
魔力量も大したことないだろうしな。
精々あっても500が良いとこだろ」
はっ?何言ってんだこいつ。
500のわけないだろ。
ついこの間自分のステータス確認したら、4000はあったぞ?
俺の見間違いじゃなければな。
そう思って、パッド君を召還し、確認をしてみた。
ほら、やっぱり4000だ。見間違いじゃねぇ。
でも何でクウはそう思ってたんだろ。
そんな疑問も浮かんだ。
「それって、迷信とかじゃなくってですか?」
「今までお前と同じように、色の薄い奴を見てきたけど、皆魔力が弱かったな。
それに魔力量も少なかったぜ?
小さな水弾10発も放てれば上出来な方だったよ」
「そうですか・・・・」
あれ?あれあれ??
じゃあ、俺は?
・・・・・クウの言う事が正しければ、俺は『魔剣士』ってやつになれるって事か。
魔剣士か・・・・、どういう戦い方をするんだろう。
まぁ、クウの戦い方を見て研究でもするか。
そんな話をしながら歩いていたが、クウがロジャーに話しかけられ、今は迷宮の攻略について作戦を立てているようだ。
俺はと言うと、町の外をこんなにのんびり歩きながら眺めるのが初めてだったので、少々興奮していたかもしれない。
そんな俺に気が付いたクウが、一人になる時間をくれたのだと思う。
気の付く男は出世するぞ。クウ。
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