天ノ河 玉藻 2016-02-02 01:54:26 |
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全神経を集中して、ありったけの不機嫌オーラを釀し出す。
しかし、それもシャミの前には無駄の一言だった。
「ほーら、いつまでそんな顔してんの。せっかくの美少年が台無しだぞー?」
「何が美少年だっ……こんな格好させて……これじゃまるで、女の子だよ……」
シャミに捕まった僕は、強制的にシャミの部屋へ連行され、こうして無理矢理着替えをさせられていた。女の子の服装に。
「これで、よし!……ははーん。やっぱり似合ってるじゃない」
「うぅ……」
目の前には大きな姿見がある。一切曇りのないそれは、中々に上等なものだ。
その中には、綺麗な服を着た女の子……もとい、僕の姿が写し出されている。
白く長い髪は後ろで結ばれ、頭のてっぺんには赤い大きなリボンがちょこんと乗っており、青を基調としたワンピースを身に着けたその姿はさながら、不思議の国のアリスだった。
シャミと同じアメジスト色の瞳と目が合う。
若干引き気味な自分の目を見ながら、考える。
どうしてこうなったッ!
……いや、もとはと言えばシャミが女装だ何だと言い出したのだ。そんな本人は、目を輝かせながらあらゆる角度で僕を見ている。
呆れを通り越して、最早どうでもいいくらいだ。
……いや、どうでも良くないけど。
「いいわぁ……何ていうか……守ってあげたい初々しさって言うの?何かこう、ぐっと来るわねぇ……」
誰か、この変態を止めてくれる人は居ないのだろうか?
この瞬間、家族が居ないことを大いに恨んだ。
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