天ノ河 玉藻 2016-02-02 01:54:26 |
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太陽の位置が低くなっていくに連れて、森の中は徐々に暗くなっていく。
あと2、3時間もすれば完全に日が暮れるだろう。
その前に例の城に辿り着けるのだろうか?
僕の目の前を進む女性を見ながら、僕はそう思った。
ミミア・トパーズと名乗ったその女性は、オレンジ色の綺麗な長い髪を揺らしながら凛とした姿勢で歩いている。その行動には何ら不審な部分はない。だがしかし、問題はその格好だ。
黒いロングスカートに白いエプロン、それから無駄にフリフリの装飾を施した服装……そしてダメ押しとばかりに頭に乗っている、これまたフリフリしたカチューシャらしきもの………一体、この服は何なのだろう?
やっぱりエプロンをしているのだから、家事をするための……?
それにしては少し……というか、かなりヘンテコな格好だ。
……まぁ、何げに絶賛女装中の僕が言えた義理ではないけれど。
「………。」
僕は自分が手にしている、布で作られた袋を眺めた。中身はクッキーだ。
ついさっき、ミミアさんに貰ったもので、とっても美味しい。シャミといい勝負になると思う。
「あっ」
「え?」
突然、ミミアさんが声をあげて僕の方を向く。
「まだあなたのお名前、聞いてませんでしたね~!」
優しいお姉さんの笑顔に、好奇心が混ざったようなふんわりした笑顔で詰め寄られる。
近い!顔が近いです!
「え、ええと……スティラ・アルケミー、です」
素直にそう答えると、ミミアさんは僕の手を両手で掴んで「あらあら~、顔に似合ってかわいいお名前ね~」なんて言う。
かわいいって言われたよ……
僕の男としてのプライドが早くも瓦解の一途を辿る。
「あの……勘違いしてるみたいですけど……僕は、男です」
「あら?そうなの?でもその格好……」
「……………これは……その、湖より深い訳があるんです……」
「そう……分かるわ……きっと、女装させられたのでしょう?」
ああ神よ………いや、この人こそ神だ。
ああ、何て神々しい……
「だって、私だったらこんなかわいい子が近くにいたら、女装でも何でもさせてみたくなっちゃうもの……」
神じゃない………この人は悪魔だ……!
◇ ◇ ◇
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