プロローグ _________________ パキッ___ 地面に落ちていた小枝を踏み、小気味良い音が響く。 天気の良いある日の正午、僕は散歩に出掛けていた。散歩と言っても、別段何があるわけでもない田舎の村では、行く場所など特にない。強いて言えば、森の奥にある湖が綺麗なだけだ。エメラルドグリーンに輝く水面にはカモの親子がいて、稀に魚をつついて食べているのが微笑ましい。それだけだ。 ……つまるところ、本当に何もないのだ。 王都から程遠い辺境の村には、今日もありふれた平穏な時間が流れていた。 「はぁ~……」