太陽 2015-12-22 01:12:59 |
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≪2話≫
「なあ…雪、これはもう無理だ」
「え……でも…」
「諦めよう」
「そ…そんなのダメ、だ」
「いや…だがなあ…」
俺は今、雪の部屋にいる。雪と一緒に学校に行こうと思ってのことだ。
「雪、今日はもう学校サボろう」
「……!だ、ダメ……まだ入学したばっかなのに………」
「ああ…俺もそう思う。だから俺は今日、早起きした」
「う…うん…」
「そしてお前の家に来た…7時半にだ」
「うん…」
「そしたらお前はまだ寝てたんだったよな?」
「う…ご、ごめん…宗哉……」
「いや、その時はまだ時間があったから良かった。起こせば起きると思って俺はお前を起こしにかかった」
「………………」
「だがお前は全然起きなかった。そして時間だけが経っていった」
「………………………」
雪は申し訳なさそうに俯いて黙り込んだ。
「………今何時だ…雪…」
「12時、は…半………」
「そうだよ!12時半なんだよ!今になって支度終わっても意味ないだろーーーーーが!!って言うか、何でそんなに起きなかったんだよ!?」
「…き、昨日…いや、もう今日、か…テレビで……3時から5時まで…ホラー特集やってて…」
「その時間帯ならもう諦めろよ!録画しろ録画!つかテレビ局も何で春の午前3時から5時までにホラーの特集したんだ!?」
ああもう!ツッコミどころ多過ぎるよ!
「ん…?でもお前5時に寝たとすると、12時まで寝ることは無かったんじゃないか?」
「ああ…ぼ、僕……最低8時間、は毎日寝てるん………だ…………zzzz……」
「寝るなぁあああ!!そして小学校低学年の睡眠時間だそれは!」
その後、なんやかんやで俺達は家を出て学校に向かう事となった。
入学式から5日が経ち、俺達は結構仲良くなった。友達になって2・3日の間はまだ正直俺は雪の事を恐れていたが、一緒に過ごすうちにだんだんと打ち解けていった。雪は結構良い奴だったのだ。
学校への道を進みながら、俺は隣を歩く雪を見上げた。
雪は大体175cmくらいの身長で体格はやや細め。長い前髪で顔は隠れているが、なかなかのイケメンだ。
対して俺は、164cmという身長の上、より自分を強く見せるために髪を白に染めている。顔は……うん、凄く地味な顔だとよく言われる。
明らかに俺より雪の方が友達が多そうだし、なんならモテそうなのだが……
学校に着くと、まだ昼休みだった。
俺は自分席に座ると後ろを振り向いた。俺と雪は同じクラスで雪の席は俺の4つ後ろだ。
雪が席に座ると、半径2m以内に一切人が寄り付かなくなった。別にいじめとかでは無い。雪が近寄りがたい空気を発しているからだ。
雪は昼休みだというのに何をするわけでも無く、ただただ虚空を眺めてぼーっとしている。
……実はこいつの方が霊感強いんじゃないかとさえ思えてきた。
本当に変な奴だなあ…
※
放課後。
入学後5日で大遅刻をかました俺達は、一通り担任に小言を言われてから家路に着いた。
「しっかしあれだなあ、もっと怒られるかと思ったけどそうでもなかったなあ、説教」
「………………………………(コクリ)」
「5分くらいで終わったよなあ、さすが不良校だ」
「……………………………(コクリ)」
俺と雪は喋りながら(と言うか一方的に話しながら帰り道を歩いていた。
……………?
最初は耳鳴りのようなものだった。
だが、徐々にそれは鮮明に聞こえてくるようになった。
………泣き声、だった。
尋常じゃない様子の泣き声が聞こえてきたのだ。
少女の声だと、何故か直感的に分かった。
「……どうしたんだろうな?」
「?……何、が?…」
「泣き声だよ!聞こえるだろ?」
雪はしばらく耳を澄ませた後、ゆっくりと首を横に振った。
「……聞こえない………」
「………!!」
この声の主は、生きている人間ではない………。
……聞かなかった事にして帰りたかった。
響いてくる声は、どこまでも辛く、悲しそうで、聞くに堪えない。
でも………
『可哀そうな人たちを助けてあげて』
……………………仕方ない。
「悪い、雪。先帰っててくれ」
俺は雪が返事をする前に声のする方向に向けて走り出した。
≪2話・完≫
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