太陽 2015-12-22 01:12:59 |
通報 |
「え……と、お……落ち着いたか……?」
ゼーゼーと肩で息をする俺を心配そうに眺めながら、雪は尋ねた。
「あ、ああ……」
まだ心臓の鼓動は速いままだが、強がってそう答えてみせる。
東京で暮らしていく上で、俺はまず胆力を鍛えた方が良いな……。
このままでは本当に早死にしてしまう。
「で、えと……どこ行こうと……してたんだ?」
「ああ、いや……」
俺は思わず言葉に詰まった。
俺が桃菜の所に行こうとしていると知ったら、十中八九雪は付いてくるだろう。
コイツにどれ程の霊感があるかは分からないが、まあそんなに強いとも思えない。
恐らく桃菜の姿を視認する事は出来ないと思われる。
となると俺が桃菜と話していても、雪には俺が一人で喋っているようにしか見えないと言うことで…………。
それは、なんか、アレだ。
恥ずかしい。
「べ、別に……何でもねぇよ」
「?そう……か……」
雪は釈然としない様子だったが、あまり深く追及するつもりは無いらしく、それ以上何か聞いてくる素振りは見せなかった。
「……てかお前もう帰れよ!言っとくけどお前の立ち入り許可してねぇからな俺!?」
そうだ。
そもそも問題はそこだろう。
流石に雪と言えど、知らぬ間に自宅に入られては困る。
「う……ダメだったか……?」
俺の言葉に、雪はしゅんと落ち込んだ。
多少良心が痛むが、妥協はしない。
「そうだ!ほら、さっさと出てけ!お前だって誰かに勝手に家に入られるのは嫌だろ?」
俺は雪の背中を押して玄関に誘導しつつそう言い聞かせる。
俺、コイツの保護者か何かか?
「?…………別に……」
「別に!?」
「……宗哉も……毎朝……僕の家、入って……きてる……し……」
「あ」
そうだったな。
毎日起こしに行ってるわ、俺。
て言うか雪、夜自宅に鍵かけてないんだよな。
防犯意識ゼロだ。
まあ、雪は自身がS●COMみたいなモンだからな……。
「……分かった。今日だけ許可してやる」
「!ほんと……?」
俺がそう言うと、雪はぱっと顔を輝かせた。
「でもあくまで今日だけだからな。俺あんま人を家に上げたくないタイプなんだよ」
「そうなのか……?ば、僕…誰かが家に来たこと無いし……誰かの、家に……行ったことも無かったから……よく分からない…………」
「出てけとか言って悪かった。いつでも来てくれ」
幸の薄さに負けた。
なんだかんだ言って俺はコイツに甘いのか……?
お陰で今日の予定が台無しだよ……。
トピック検索 |