太陽 2015-12-22 01:12:59 |
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≪5話 続き≫
「………宗也…………」
背後から唐突に声がした。
振り向くと雪が鞄を持って立っていた。
「………もう、5時過ぎだ………そろそろ帰ろう……」
―こいつ、居たんだ………。
ずっと何も話さないから存在を忘れていた。
俺は腕時計に目を落とす。最終下校時刻の5時半まで後20分程しか無い。
気が付けば周りに人は居なくなっていた。もう生徒は全員帰ったのだろう。
「よし、じゃあ帰るか」
そう言って俺が帰り支度を始めると、
「待ってください!僕も一緒に帰りたいです」
慌てて沖花も鞄を手に取った。
だがバランスを崩してしまったようで、少しふらつく沖花。
転びそうだったので手を取ってやると恥ずかしそうな笑みを浮かべつつ、
「ありがとうございます」
と礼を言ってきた。
―この子が女子だったらモテただろうになぁ―
※
次の日、俺達は昼休みに屋上で作戦会議をすることにした。
弁当を持って屋上に行くと、無人だった。
まだ4月だ。冷えるので誰も屋上で飯など食わないのだろう。
俺達にとってはその方がやり易い。なんせ苛めっこへの逆襲の計画を話し合うのだ。部外者はいないに越したことは無い。
「確か2人は購買で買ってくるんだったな……」
雪は俺と同じ一人暮らしで、ほぼ毎朝寝坊しているので弁当は持って来ていない。
沖花は両親が共働きで、まだ小学生の妹の世話で忙しいらしく、同じく弁当は無い。
弁当派は俺だけだ。
雪達が来るまで、俺は屋上のフェンスにもたれかかって今後の事を考えていた。
―まずは相手の情報が欲しいな……。顔も名前も知らないし。クラスは多分沖花と同じクラスだな。ん?
ちょっと待てよ?苛めっこは一人とは限らないんじゃないか?
普通苛めは多対一で行われるものだ。桃菜が言っていた「苛めっこ」が一人である可能性は低い。
2人組みとかならばまだましだが、もし相手がグループだったらいくら雪がついてるとはいえ少しきつい。
……あれ?以外と難しいかもしれないぞ?本当に上手くいくのか?これ。
何だか不安になってきて、俺はその場に座り込み溜息を吐いた。
その時、屋上の入口のドアが開けられ、沖花が現れた。
どうやら購買から帰ってきたようだ。
………ん?
よく見ると沖花は財布を持ってるだけで後は何も持って無い。
「おーい!沖花ー」
手を振って声をかけてみるが、沖花はドアの前で立ち尽くしたままだ。
「………?」
俺は不思議に思い、沖花の元へ走り寄って訊ねた。
「お前何で食い物持ってないんだ?購買行って来たんじゃないのか?」
「………………弱肉強食」
会話が成立しない。
「沖花?何が弱肉強食なんだよ?」
「…あそこはいくさばです…………」
戦場。
「………購買のことか?」
沖花は無言で頷いた。
※
基本的に高校の購買は昼休みに賑わうものだろう。
だがうちの学校の購買の混み様は「賑わう」という言葉で表現出来ないレベルのものだ。
通勤ラッシュ時の新宿駅と同等、又はそれ以上のものがある。
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