太陽 2015-12-22 01:12:59 |
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≪プロローグ≫
俺は幼い頃から、幽霊が見えた。
3歳くらいの頃から何も無い所に向かって喋りだすようになり、お蔭で幼稚園では馴染めず、仲間はずれにされていた。当時の俺には普通の人間と幽霊の見分けが付かず、どうしてみんな遊んでくれないのか理解できずにいた。両親にも気味悪がられ、俺の唯一の理解者は9つ歳の離れた姉だった。
「宗哉が見ている人たちは、可哀そうな人たちなんだよ。」
「宗哉にだけ見えるのは、優しい心をもっているから。」
「その優しい心で、可哀そうな人たちを助けてあげて。」
優しい姉だった。
本当に、優しい姉だった。
そんな姉と暮らしていたのだから、俺はとてもとても穏やかな性格に…
なってもよかった
なるはずだった
ならなかった
まあ、つまり、端的に言うと、
…グレたのだ。
※
俺、小森宗哉は中2で完全にグレた。
いくら姉が優しかったとはいえ、俺に異常なまでの霊感がある事は変わらない。幼稚園から小学校、中学校まで進学しても、俺には一切友達ができなかった。それどころか、中学生になってからはいじめられ始めたのだ。「幽霊男」「近づくと呪われる」などと陰口を叩かれ、ついには教科書を盗まれたり、靴を隠されたりした。
中1の冬、鞄を池に投げ込まれた時、とうとう俺の怒りが爆発した。俺をいじめていたグループのリーダーを、思いっきり殴ったのだ。予想外にそいつは吹っ飛び、俺は両親の呼び出しと担任の説教をくらった。でもその事がきっかけとなり、なんといじめられなくなったのだ。
それ以降、俺は強くなった。売られた喧嘩はすべて買い、他校の生徒ともやりあった。そしていつしか俺は町中の中学で最強の男になっていた。
※
この春、そんな俺もとうとう高校生になる。そして上京し、1人暮らしをすることになったのだ。
勿論勉強する気などさらさら無い。喧嘩する為に東京に来たのだ。入学先はゴリゴリの不良校。その学校のトップに立つつもりだ。
その時は。
まだそんな事を思っていた。
あの現実を
見るまでは。
≪プロローグ・完≫
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