ラノベ書いてます。※ただし初心者

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宇治抹  2015-11-01 19:02:42 
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暇を潰せたらと思い、小説を書いております。いずれは小説家になろうの方へ投稿しようかなぁ、なんて考えてます。
ここに投稿する小説は執筆途中だったり、文が滅茶苦茶だったりします。もし良ければ読んでやってください。そして感想や指摘など頂ければ幸いです。

魅力的なキャラに序盤から読書を引き込む展開。そんなものが書けるようになりたいと思うこの頃。

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  • No.14 by 宇治抹  2015-11-17 15:27:28 

【第2話-2】

 取り残された梨穂子は呆然と立ち尽くしていたが、すぐに現状を思い出して我に帰る。
「平気って言ったって、いくらなんでも──」
「いや、恐らく問題ないだろう」
「ひゃあっ!?」
 突然真後ろから発せられた声に驚き、情けない声を上げてしまう。恐る恐る振り返れば、そこには最初に声をかけてきた慶閃の生徒がいた。
 敬語を使われていたことから、恐らく2年か3年。あの失礼な連中と同類、というわけではなさそうだが。
「すまない。驚かせたか?」
「いえ……」
 梨穂子は顔を赤くする。恥ずかしい姿を見せてしまった。
「それより問題ないというのは?」
「見た感じ、あの優也という男は中々やるようだ。あいつら程度では話にもならんだろう」
 一目見ただけで優也の実力を見抜き、冷静な判断を下す目の前の人物に驚きを隠せない。只者ではないことだけは確かだ。
「あの……彼らは仲間では?」
「ふっ、冗談を。あいつらを一度でも仲間と認めたことはない。勝手に付きまとわれて困っているぐらいだ」
「色々あるんですね、慶閃にも」
「ああ──。と、話しているうちに決着がついたみたいだな」
「えっ!?」
 梨穂子が慌てて優也の元へ向かうと、そこには倒れ伏せる数人の男とそれを見下ろす優也の姿があった。
 この短時間で複数人を相手に勝利したの?
「……大したことないですね、慶閃の生徒も。貴方の弟分じゃないんですか、六条(ろくじょう)信助(しんすけ)さん」
「ふっ……まさか」
「六条……?って、確か慶閃でリーダーを務める人物じゃ──!」
「そうだよ。その本人の真横にいたんだよ、梨穂子ちゃん。気づかなかったの?」
 気づかなかった。確かに見覚えはあるな、と感じていたのだが、まさか本人だったとは。
「申し遅れたな。慶閃で部長を務めさせてもらってる、六条信助だ」
「ひ、ひゃい!こ、これはどうもご丁寧に!」
 梨穂子は動揺のし過ぎで口が回らないようだ。突然のカミングアウトだったし、仕方ないといえば仕方ない。
「君は二葉優也だったな。中学では目立った活躍はなかったが、俺は君のことも評価している。もし君が個人戦に出ていれば、無類の強さを誇っていただろうとね」
「………………」
「え、それってどういう──?」
 興味津々という様子の梨穂子を見て、これ以上隠し通せないと観念したのか、優也は正直に口を割った。
「梨穂子ちゃん。僕の剣異はね、周囲の重量を変化させる能力なんだ。だけどそれは味方も巻き込む力。だからチームプレーには向かない剣異なんだよ」
 でも、待って。優也君は団体戦に出たいんじゃ──。
 梨穂子が二の句を継げずにいると、いつの間にかフィールドの真ん中に佇む信助が優也に声をかける。その手に、得物を持って。
「さて、二葉優也。うちの部員を打ちのめしてくれた礼だ。剣を取れ」
「……戦え、と」
「ああ。お目当の一宮直太郎は腑抜けになったようだしな。──貴様で我慢しよう」
「……挑発なら無駄ですよ。と、言いたいところですが」
 どうやら優也の怒りはまだ治っていなかったようだ。そこに、続けざまに直太郎に対する侮辱。優也はさらにヒートアップする。
「その挑発に乗って──ぶっ倒させてもらいますよ!」
 優也の目がカッと見開く。瞳孔は開き、歯を噛み締める姿はまさに獣。
「梨穂子ちゃん、下がって!」
 剣異の力が梨穂子まで及びかねないと判断した優也は声を上げる。その声に驚いた梨穂子は慌ててフィールド外まで退場した。
「地に伏せろ!」
 優也が剣を地に突き刺すとその周囲の重量が変化し、立っていられないほどの圧がのしかかる。
 ぐらり、と信助の体が揺れる。だが、それだけだった。
 信助の体は揺れこそしたが、地に倒れることはなかった。それどころか重力に慣れたように感じさせる。
「予想以上に|軽いな(・・・)。こんなものか?」
「くっ……!」
「言っておくが、この程度の重さはうちの練習メニューでこなしている。その力、大したことはなかったな」
 優也の首が項垂れる。自身の剣異をあっさりと突破されて、ショックを隠せないようだ。
 梨穂子は何と声をかければいいのか躊躇った。何せ、優也は肩を揺らして涙しているように見えるから。
 しかし、それは見当違いだった。泣いているのではない。笑っているのだ。危機的状況に陥っているというのに。
「軽い、だって?当然でしょう?何せ僕は──」
 優也は背後から小さめの剣、ダガーを取り出した。ロングソードを右手に、ダガーを左手に所持する、いわゆる双剣というスタイルだ。
「本気を出していない!」
 優也はその場から大きくジャンプした。そう、大きく。それは人間の身体能力では不可能なレベルの高さだ。
「───!」
 信助は言葉にこそ出さないものの、表情は驚きに染まっていた。
 何をそんなに驚いているんだろう?重力操作が出来るなら、高く飛ぶことだって可能なんじゃ?
 梨穂子は首を傾げたが、信助が驚いた理由をすぐ知ることになる。
「はァッ!」
 空中から襲いかかるように迫る優也の一太刀を信助はギリギリのところで避ける。その動きに梨穂子は疑問を抱いた。
「何だろう、六条さんの動きが重たいような……。もしかして」
 優也の軽快さと信助の動きの鈍さ、それはつまり信助の重量を増加させたまま、優也の重量だけが軽減されているのでは。
「……なるほどな。この一年で重力操作のコントロールを身につけたか」
「それだけじゃない」
 間髪入れずに優也の追撃が信助に迫る。重力に慣れたというだけあって、2撃3撃目と辛うじて避けられた。
 しかし次の瞬間、信助にのしかかる重力が増大する。
「な、に……ッ!?」
 その重量に耐えきれず、思わず信助は膝を付いた。立つこともままならないのだろう。
 優也は信助の目前に剣先を向ける。
「勝負あり、ですね」
 価値は揺るがない。そういった自信からか優也の声には活気があった。
 今まで優也の実力は未知数だったが、とんでもなく強いではないか。
「……ここまでの実力を有していたとは、な」
 負けを認めた、と梨穂子は思った。しかし、そうではない。
 今の言葉は六条信助という男を本気にさせたということだ。
「なっ──!?」
 この重力下の中でもなお、信助は立ち上がった。その姿は今にも重力に押し潰されてしまいそうで、不安定だ。
 だが何故だろう。今の信助は、さきほどよりも格段に強いと感じさせた。
 優也は首を振る。動揺しては相手の思う壺だ。
 落ち着け。この重力下の中、満足に動けるはずがない。ただのハッタリだ。
 優也は迷いを断ち切るため、満足に動けないであろう信助に向かって剣を振り下ろす。

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