ラノベ書いてます。※ただし初心者

ラノベ書いてます。※ただし初心者

宇治抹  2015-11-01 19:02:42 
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暇を潰せたらと思い、小説を書いております。いずれは小説家になろうの方へ投稿しようかなぁ、なんて考えてます。
ここに投稿する小説は執筆途中だったり、文が滅茶苦茶だったりします。もし良ければ読んでやってください。そして感想や指摘など頂ければ幸いです。

魅力的なキャラに序盤から読書を引き込む展開。そんなものが書けるようになりたいと思うこの頃。

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  • No.11 by 宇治抹  2015-11-09 16:20:24 

【第1話-3】

 梨穂子よりも一足先に学校へ辿り着いた直葉は、自分の席に座り朝のHRを待った。
 落ち着く時間ができると、先ほどのやり取りを思い出して今更ながら恥ずかしさが込み上げてくる。
 子供じみた真似をしてしまった。梨穂子はきっと、気を遣って言ってくれたはずなのに。
 自分の席で頭を抱えていると、正面に誰かの気配を感じた。
「……優也か」
「優也か、とは失礼な。おはよう、ナオちゃん」
「おはよう。つーか、そのナオちゃんっての止めろよ。恥ずかしいだろ」
「いいのいいの。この呼び方が気に入ってるんだし」
「俺はちっとも良くないけど」
 いくら言っても改めるつもりのない優也の様子に、半ば諦めるように溜め息を吐いた。
 名前通り、優也はとても優しい性格で誰とでも分け隔てなく接することができる人物だ。たれ目気味な瞳に笑顔が絶えない口元、表情だけを見ても優しさが満ち溢れているよう。その優男っぷりに心を鷲掴みにされた女生徒は数知れず。
 そんな優也と共にいると、自然と直葉も視線を集めてしまうことになるが、気にしないように努める。
 それよりも、直葉は今朝方聞いたばかりのブレード部について優也に尋ねた。
「ブレード部を立ち上げたんだってな」
「そうだよ。僕はまだブレードをやりたいからね」
「だったら──」
「ブレード部がある高校へ行け?」
 直葉の言葉は遮られ、言いたいことを先に言われてしまう。それが面白くなかったのか、直葉は少しだけムッとした表情を見せる。
「……そうだ」
 優也は何故ブレード部がない高校へ来たのか。やはり直葉の存在が枷になっているのだろうか。
 しかし予想に反して、優也の答えは直葉の想像とは全く異なるものだった。
「チームで戦いたいと思ったからだよ」
 直葉はその言葉の意味を理解できず、ポカンと口を開けたままの間抜けな表情を見せる。
「もしかして、ナオちゃんがいるからこの高校に来たと思ってた?違うんだなぁ、それが」
 優也は直葉の考えを一蹴する。僕は僕の意思でこの高校を選んだ、と優也はハッキリと口にしたのだ。
「もちろんナオちゃんとまた一緒に戦えたら──ナオちゃんと勝負ができたら、って思う事はあるよ。でも僕がここを選んだ理由はさっき言った通り」
「チームで戦う……?」
「そう。──今やブレードは一番と言ってもいいくらい人気のスポーツだ。どの高校にも野球部やサッカー部があるように、ブレード部も当然のように存在することはナオちゃんも知ってるよね?」
「ああ」
「そんな中でブレード部がない高校はとっても珍しいわけだ。だからここを選んだ」
「……意味が分からない」
「つまり──0からスタートしたいんだよ。すでに完成されたチームの中で戦うよりも、1から作り上げたチームで戦いたいと思った」
 開いた口が塞がらない。0からスタート?
 何故わざわざハンデを背負って戦おうとするのか。何故わざわざ苦労するような道を選ぶのか。直葉には理解できなかった。
「ナオちゃんはさ、強さばかりを求めていたでしょ」
「ああ」
「でも、その結果があれだよね」
「…………」
 1年前の事故のことだろう。直葉は言葉を発することもなくなった。
「ナオちゃんには僕らが見えていなかった。チームのことを考えてくれていなかった。1人のほうが戦いやすいと思わせてしまった」
 直葉に対するダメ出しかと思ったが、違う。そういう環境を生み出してしまったことへの懺悔のようにも聞こえる。まるで悪いのは僕だと言うような口ぶり。
「だから僕は1からチームを作り上げたいと思った。チームワークこそが大事なんだってことを証明するためにも」
 優也は握りこぶしを作りながら熱く語る。
 そういえば、中学の頃のチームは確かに信頼関係なんて言葉とは無縁だった。
 直葉が中学のブレード部に入部した頃、すでにそこではチームワークみたいなものが確立されていて、その輪の中に入る余地は一寸たりともなかった。完成されたチームだったというわけだ。
 上級生が次々と引退し、直葉の世代が最上級生となった後も結果は散々だった。チームとしての戦いを教えてもらえなかった直葉達は連携なんて言葉を知らず、バラバラに行動するようになった。
 それに直葉は個人戦で名を大きく上げていたから、それを快く思わない同級生達から嫉妬の目を向けられていた。
 そんな信頼関係もへったくれもないチームで戦おうなど愚の骨頂だ。優也はずっとそう考えていた。
「ナオちゃんがいれば団体戦でも優勝できたかもしれない。でも、それはあまりにも面白くないだろう?僕はチームで戦いたいんだ。だから、確実に信頼関係を育める選択肢を取った」
「それがここってわけか」
 あの中学が特別なだけで、全ての高校が新参者に厳しいわけではないだろう。もっと楽な道があったはずだ。
 だが、優也はあえて一番厳しい道を選んだ。
「僕は逃げないよ。一度選んだ道から、逃げ出すことはしない。だから、ナオちゃんも」
 優也は、直葉が自己中な人間だったにも関わらずチームのことを考えていた。皆の事を考えられる人間が作るチームなら、さぞかし戦っていて気持ちが良いだろう。
 もしもやり直せるなら、優也が作ったチームで一緒に戦いたい。優也の申し出を受け入れてしまいたい。
 しかし、それは許されない行為だ。
「悪い、俺はもう剣を握らない。それが俺の罪滅ぼしだから」
 直葉は一寸の迷いなく剣を握らないと口にした。その決意は固いのだろう。直葉の瞳は真っ直ぐに優也へ向けられていた。
「待ってよ、ナオちゃん。罪滅ぼしって、そんなことを考えてたの?」
「ああ」
 昔から直葉は自分に厳しい人間だと思っていたが、そこまで責任を感じていたとは思いもしなかった。
 そんな性格の直葉が剣を握らないと断言したのなら──それはもう、ブレードを引退したと言ったも同然だ。
 優也がショックを受けている様子を見て居た堪れなくなった直葉は、突然その場を立ち上がった。
「……少し、外の空気を吸ってくる」
「あ、ナオちゃん!」
 背中から直葉を呼ぶ声が聞こえたが、立ち止まることもせず教室を後にした。
 強さばかりを追い求めた直葉が犯した罪。それは簡単に許されるものではない。
(だから──悪い。俺はもう、剣を握っちゃ駄目なんだよ)

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