karasu=925 2015-08-09 22:05:44 |
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「ー助けて!」
歩いて行った先で少女が数人の男か女か分からない人間に襲われていたら、普通の人間は驚くだろう。だが、俺は動じない。無駄な事はしない。どんな状況であろうと、何と言われようと、俺は動じない。ただただ、平凡に今を暮らす。これまでも、これからも。それが俺の人生であり、俺の役目だ。
「お願い!助けて!」
何と言われようと、俺はどうじない。少女とその周りの人間達を無視して、目的地に歩き続ける。
『たすけてあげてね』
刹那、ゾクッという悪寒とともに、頭に声が響く。そして、少女が襲われている様子に似た、記憶の中にあった映像が頭の中にうつしだされる。
「(思いだすなッ思い出すなッ思い出すなッ!!)」
その場に立ち止まり頭を抑え、必死にその映像と声をかきけそうとする。自分にとってこんな記憶は必要ないのだ。
『そらクンは優しいから…』
余分なものをかきけしたはずの頭に、とぎれとぎれの声が響く。その声に怯え、頭を抑えながら地面に膝をつく。
『また…僕みたいな人に頼られると思う…だから…その時は…』
「(やめろッ!もう…やめてくれ…)」
『たすけてあげてね』
「あ…ああ…」
力が抜け、地面にペタリとその場に座りこむ。
「助けて!お願い!」
自分のすぐ隣で聞こえた声は、放心状態だった自分にとってはずいぶん遠くからの声に聞こえた。しかし、その声は、自分を現実に引き戻すのには充分だった。
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