燭台切光忠 2015-07-25 21:54:48 |
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そんな、君が気に病む事無いよ。
(ぼんやりと開かれた瞳は穢れひとつ無く本当に綺麗だと思う。本体の斬れ味を思わせる鋭い光も寝起きだからか今はなりを潜め、なんだか普段よりも幼い印象を受けた。今しがた引越しを済ませた所なのだと相手に説明をしようとしたのも束の間、今度こそ覚醒した様子で慌てて辺りを見回す姿を見れば思わずくすくすと笑い声を上げて。それなりに効果のある薬を選んだから、相手はきっと突然襲った睡魔の理由もわからぬまま夢の世界に旅立ってしまったのだと思う。だとすれば状況を飲み込めず混乱するのも納得だ。始めこそ普段とはまた違う相手の姿を見れた事に喜びを感じ笑みを浮かべていたが、続けて発された相手の言葉を聞くと僅かに眉を下げて。目覚めて直ぐに彼の口から主という単語が出てしまったのも残念と言えばそうだが、今回の状況では仕方ないとも言えるため気にしない。問題なのは、自分を責め立てるようなその言葉だ。君はとても素敵な人なのだから、自己嫌悪などしないでほしい。そんな気持ちを込めつつ相手の顔を覗き込むようにして上記述べれば「_睡眠薬を飲んだら眠くなるのは当然だろう?」などと言葉を続けて。何はともあれ、今日からは余計な事で彼に気を使わせる事は無くなる。そうすればきっと、彼は自分だけを見てくれるようになる筈だ。だから仕事の事も、主の事も、彼の脳内を埋め尽くす自分以外のものの事は全て忘れてしまえばいい。歪みきった思考回路ではその結論の異常さになど気付く筈もなく、ただただ慈しむように目を細めればじっと相手を見据えて。「これからは辛い仕事の事なんて…ううん、僕以外の事は何も考えなくていいからね」短刀達をあやすような手付きで相手の頭を優しく撫でながら幸せそうにふわりと笑顔を浮かべればまるで砂糖菓子のような声音でそう言ってみせ。)
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