燭台切光忠 2015-07-25 21:54:48 |
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あはは、君らしいね。…でも、今日くらい喜んでほしかったなぁ
(短く返されたまるで相手を斬り捨てるようなその口調は正に相手らしいと言えるもの。照れ隠しの類いならば可愛らしいものだが、今の発言がそうか否か見分けがつく程度には自分は相手を見てきた。これは完全に呆れられている。それがサプライズに対してのものならまだいいが、もしかして相手はこの引越し自体が何かの冗談だとでも思っているのだろうか。その可能性が浮かんだ瞬間苦笑を浮かべれば上記述べた後どこか悲しげに眉を下げて。今日はせっかく相手との新しい生活が始まった、記念すべき日なのだ。驚いてもらおうと前もって相談しなかったのは悪かったかもしれないがもう少し彼にも自分と同じような気持ちを抱いてほしかった。しかし、すぐに後悔するのは格好悪いと首を緩く振れば再び顔を上げて。気を取り直して視線を向けた相手はいつも執務室で見せるような姿勢で自分を見つめていた。彼のこの隙のない真っ直ぐに伸びた背筋が自分は好きだったりするのだが、今はそんな場合ではない。透き通るような澄みきった藤色が自分を捉えている、それだけでひどく動揺してしまい心臓は早鐘を打った。相手の純粋そうな瞳に耐えきれず前髪を直すふりをして視線を逸らせば不意に相手が立ち上がる気配を感じ、急いで顔をそちらに向け。見れば、相手は早々に立ち上がりそのまま縁側へと行ってしまう所で。相手の後を追うべく慌てて立ち上がりながら相手の問に頷き返せば「そうだけど…って、待って長谷部くん、どこ行くの」と何処かへ行ってしまう様子の相手の手を引きつつ首を傾けて。少しでも気を抜くとすぐこうなんだから。機動に見合った行動力のある彼に内心ため息をつきながらも相手の隣に立てば勝手にふらついてしまわぬようにとしっかり手を繋ぎなおして。)
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