! 2015-05-30 17:45:06 |
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っ…!?
(尾びれの痛みと針を除く作業に専念しており人間の気配に気付けずにいたため、自分に向けているであろう声に驚き肩を小さく跳ねさせて。反射的に振り返った先にはどちらかというと質素な服装をしている人が多い漁師の島には珍しい、シンプルながらも上等そうな洋服を着た見知らぬ人間の姿があり驚きを隠せず。いつからそこに居たのだろうかという疑念と、姿を見られたことに対する危機感に近い焦燥がぐるぐると脳内を駆け巡り、ばくばくと煩く脈打つ鼓動を抑えるように握り込んだ手で胸元を押さえながらも、親切心から注意を促してくれる相手の言葉が頭に入らないほどに気は動転していて。近付いてくるほっそりと長い2本の脚を見ることしかできず石のように硬直しているも、伸びてきた白い手が器用に針を取り除いていくのを見ると、強張っていた肩から少しずつ力が抜け思考も徐々に落ち着きを取り戻していき。知識の少ないに対する恐怖心と好奇心はせめぎ合いながらも、相手の顔を見れないままで俯きがちに尾びれに触れている手とちらちらと視界に入ってくる艶やかな髪を盗み見ながら、大人しく岩場に打ち付ける波の音を聞き。先ほどまで苦労していたのが嘘のようにあっという間に抜けた針に驚いたように数回瞬きをしては、治癒力の高さと浅い傷ということもあって痛みはすぐに引いていき。そこでようやく顔を上げると、柔和な微笑をたたえた相手の姿が映りこみ思わず見入るように一度目を丸くして。肩から胸元へと零れる長い髪は太陽に透けるように煌めいており、色の異なる両方の目を眩しそうに細めながらも、そこまで何も言葉を発していないことに気付くと慌てて 「あ…、ありがとう…!あんた、器用なんだな。すごく助かった。」 恐らくもう傷口すらも残っていないだろう、針が刺さっていた部分を掌で一度撫でては、煩わしいものがなくなった解放感に頬を綻ばせてお礼を述べ。人と言葉を交わすのは何百年ぶりだろう、そんな事を考えながらも思ったより自然に出た言葉に胸を撫で下ろしながら、飛沫をあげないようにゆっくりと海水の中に降りて。)
(はい、問題ありません。素敵な青年さんで、人魚共々緊張しております…!
それではこのあたりで背後は引っ込んでおきますので、何かありましたらお呼びください。)
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