白亜 2015-01-27 15:46:03 |
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L字のカウンター、そこに10席程。他には一般的なバーと変わらない壁面の酒、奥にある大きな窓の前には酔いの邪魔をしないよう配慮された硝子の造花、広くない敷地だが装飾も最低限に留まり色も原色を避け落ち着いた雰囲気で統一されている。隠された間接照明にうっすらと照らされた店内は、客の心を解きほぐし様々な事情を落とさせる。
扉の上部に施されたアンティークの装飾に照明が反射し奥の窓、硝子の造花が輝く。3人目の客が訪れたようだ。彼はL字の一番奥に座る、それがいつもの場合であり、最初から自分のものであるかのように。
開店直後に訪れた女性客は堂々と真ん中の席に着いた。顎のラインで揃えられた深い茶色の髪、涼しげな目元だが少しマスカラがダマになっていて勿体無いと思ってしまう。その視線からも、すっきり整えられた眉、紅い唇からもサバサバした印象を受けた。おそらく、27歳前後、インテリアデザイナーを生業にしているようだ。服装はさして着飾っていないものの、毎回ボートネックの服を着てくる。拘りはあるようだ。
俺は彼女にネグローニを提供する。女性客にこのカクテルを作るのは、なかなか貴重な体験である。そっと提供すると此方を見て少し微笑み口を開いた。
「ねえ、アナタはどう思う?やっぱ、わからないかな、好きと結婚って違うと思わない?」
彼女は隣の男性客に身体を向けながらも、何かを期待するような視線を此方に向けている。
その視線が不愉快になった俺は「そうですね」と、適当に答えた。あまり興味のないことだったが、近い考えだったので否定はしなかった。
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