. 2014-12-20 11:06:23 |
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……すいません(洒落たカクテルは置いていないにしても簡単で素っ気無さ過ぎるだろうか、お任せの楽しみはこれでは味わえないだろう、好みだけでも訊いて置けばよかったと即興に弱い自分、反省しながら、苦手そうに見えてるなら期待なんてしてるなよ、と相手が酒に詳しい種類の人間で無いことを内心で祈りつつ、先に台詞に続くのか続かないのか、半ば無意識に出るフェードアウト気味の言葉。視界の端で揺らめく煙と彼の身じろぎに少し睫毛を上げると思いがけなく此方を窺う上目遣いの深い色の目と目が合って。何故かじわじわと笑い皺を深めてしまい、「あー……なに?」と一歩下がって耳に掛けていた髪に無造作に指を入れ輪郭を覆う様にし、居た堪れない心持ちで助けを求めるべくズボンの後ろポケットを探るが目当てのくしゃくしゃになった赤と白のソフトパックは空で。さっき早めに消してしまった一本が勿体無いと思うけれど流石に咥え煙草でカクテルを作る事はしないので仕方ない。何事も無かったかのように役目を終えたそれを再びポケットに捩じ込み、気を取り直してちらりと彼の方に視線を遣ると、半笑いになっていた表情をきゅっと引き締まった笑顔に作り直し向けてやり。次いでうろ、と視線を彷徨わせればカウンターの端に放置されたアメリカを代表する銘柄の煙草、おそらく名前とパッケージで選んでいるのであろうライトスモーカーのオカマの物だが、その特徴的な小さな箱から一本を取り出し、煙草一本に救われる単純な生き物だ、咥えて火を点け、先刻一瞬腰掛けたスツールに戻り)
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