主 2014-12-17 23:48:37 |
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イヌガミ邸神懸りミステリヰ
「夜露が一粒だけ零れ落ちるとしたら誰の頬を選ぶだろう。ぼくはこれから永遠と指切りするんだ。紅い襖を開ければ儀式の間。哀しい訳じゃない。そうか……これが切ないってことなんだ。豊かな旋律が瞼の裏に浮かぶ。椛が舞う。
何代も何代も受け継がれる。救いを乞う。崇拝。土着信仰。球体の先端を探し続け、ぼくはきみを救うためにヒトをやめ、きみに巣食うモノを払う。病魔よ去れ。薄幸よ散れ。ぼくはきみのために狗になる。
『桜花とは春に咲くにあらず。春に散って春夏秋冬閉じるものなり。』幽遠な回廊に迷い続け、髪は牡丹の花に絡まり、ぼくの恋は最後まで空回り。山菜を洗う父様の背に、小さな小さな箒星。鶫の羽は船の帆のように他には無い新たな花を描く。
家を継ぐのよ。強くおなりと言った。母様ぼくに言った。うん、上手くやるよ平気だよ。でもきみと遊べなくなるのは寂しいな。土地を守るために贄を捧げ、ヒトが神を造る山村に、探偵團名乗る子供ら。嗚呼どうかどうか邪魔しないでおくれ。」
謎を暴くは探偵なれど 恋を暴くはぼくらの仕事じゃない
「一歩歩むごとに蘇る。幼き日の情景。麦わら帽子の下で笑うきみ。とても綺麗だ、綺麗だった。」
「まどろむ縁側そろそろ起きて。一族の掟守るため――なんてもうそんなの本当はどうだっていいんだ。きみを守りたいそれだけなんだ。母様にだって内緒だよこんな想い。朽ちた蟻地獄に放り込んで仕舞い込んで秘密なんだ、ぼくの恋は。そしてぼくの中に神降りる。
きみの腕に胸に噛み付きたい。自分が自分じゃないみたい。そうかぼくはもうヒトじゃない。ヒトじゃない。ヒトじゃなかったんだ。それでも笑い転げ二人で絵を描き、昼寝をし、散歩をしたこと。幼い足取りで沢をまたいだこと。忘れない――忘れないよ。」
牙が生えても心は子供 獣に見えて心は子供
謎を暴くは探偵なれど 恋を暴くはぼくらの仕事じゃない
「何処かで誰かが愛を告白している。落ちてきそうな程濃い空の下で誰かが。きみの瞼に初雪が降るを見たあのときから、
ぼくはきみのことを――」
ぼくはきみの狗になる
キミノシアワセダケヲネガフ
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