匿名ゆき 2014-11-23 17:15:10 |
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Δmind(1<x<3)の影響による電車との付き合い方の変化
夕日、あるいは月光の流れる電車の中は暗い。
到着を知らせる無機質な放送は、人々の感覚を研ぎ澄ます。
誰もが背後にいる人物に思惑を悟られないやり方で
背後を確認したいと思っているのだ。
奴等が必死になればなるほど、僕は苦労せず先頭を陣取れる。
どうもありがとう。
(奴等の『こちらこそありがとう。』という声が聞こえてくる。)
10両編成なら最後部へ
15両編成なら13両目へ乗り込む。
狙いは3ドアでも4ドアでも進行方向から見て一番奥の場所。
乗り込む際には水捌けの傾斜を考慮して、電車との間に生じる隙間へ片足を滑らせるふりをする。
(足が軽く枠に当たる程度でよい。)
隅の方に目をやり、既に人がいれば
列車の中心よりやや左側に立ち本を開く。
誰もいない時、これが非常に楽しいのだ。
電車の中で出来る退屈しない遊びを教えよう。
誰でもできる遊びだが、一応適性検査もある。
車両の隅にもたれかかったり、そこで本を読んだりすることが好きなら間違いなく適性有りだ。
不思議と落ち着き、妙な明晰さを得られるように感じていることだろう。
これらは二つの壁によって背後を守れることに起因している。
そして、安全が確保できている人間は視線を浴びにくい。
隅からは目をそらして、不安そうな(何かやらかしそうな)人間を見張るのだ。
信じられない話だというならば
列車の到着まで黄色の線の上で
くたびれた線路や電線たちと駅の内側を眺めているとよい。
背後の安全は保障されているし、自身の背後であった場所には誰も目を向けない。
上手くいけば誰一人近寄らずに電車へ乗り込める。
後方に加えて前方も安全を確保ので実用的だが、同じやり方が流行しては困るので
これを読んでいる人は気をつけて実行すること。
さて、遊びについて紹介しよう。
不思議な落ち着きが得られる隅、そこが空席だった場合
安直に椅子のない席を陣取るのはもうやめよう。
そこは誰もが利用した席なのだから
最早何の新鮮味も面白味もない。
今度は一歩下がって席に座る人間を待ってやろうじゃないか。
わざとらしく、おあつらえ向きの空間を残すように
隅から70cmほど離れたところから見えない椅子を眺める。
椅子は自然と浮かび上がってきて、ドアが開くたびに安住者を待ち焦がれている。
僕の場合、移動区間が6駅しかないものだから誰も座らずに終わってしまうことがほとんどだ。
さらに見られることには抵抗感があるようで、入った瞬間は陣取ろうとするも離れてしまう者が多い。
そんなときは微笑して椅子を慰める。
一方で定住してくる者もいる。
この人間から与えた椅子を奪い返すにはどうすればよいのか。
方法は様々あるため読者が模索すると一層楽しめるが
一つ行動例をあげよう。
まず、気付くか気付かれないかのところで相手に笑いかける。
もちろん、声はあげずに口角を上げるだけに済ませた方が、後が面倒でない。
残念だが、ここまでこれた奴等はこれぐらいじゃ立ち退かない。
(立ち退かないからといって笑いかけないのは良くない、準備期間なのだから慎重にいこう。)
そんな時に活躍するのがミニ・ノート。
ペンを持って乱雑に筆を走らせるだけでも十分効果がある。
適当に作った関数のワイングラスの体積でも求めようとしているうちに
十中八九奴等は席を去る。
それでも立ち退かない奴に対抗する策はまだまだあるのだが…。
独自性を養ってもらう為にも、これよりも興味深いと思われる話は控えさせていただく。
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